日替り弁当一本で勝負し、就労継続支援B型を3拠点運営する「ひがわり弁当」。時給930円(条件により950円)という高い工賃、前日予約制によるロス削減、そして“職員の負担を減らすDX”で現場を回しながら、利用者が安心できる居場所づくりも徹底しています。
コンプリメント代表 壬生佳孝さんに、立ち上げの背景から運営の工夫、支援で大切にしている姿勢までを聞きました。
ひがわり弁当(就労継続支援B型)の事業所基本情報
| 運営法人 | 株式会社コンプリメント |
|---|---|
| 事業所一覧 | ひがわり弁当 甲子園店 ひがわり弁当 杭瀬店 ひがわり弁当 立花店 |
| 本社所在地 | 〒660-8114 兵庫県西宮市上甲子園4丁目4-12 上甲子園ビル2階 |
| 設立日 | 2018年8月9日 |
| 事業内容 | 就労継続支援B型事業所 |
| 主な対象 | 精神障がいのある方 |
| 主な作業内容 | ひがわり弁当の製造、配達 |
就労継続支援B型「ひがわり弁当」とは?
やすまさ今日はよろしくお願いします。
最初に、壬生さんの自己紹介からお願いできますか。



こちらこそありがとうございます。
コンプリメント代表の壬生佳孝です。
精神保健福祉士を2007年に取得して、精神障害のある方の支援にずっと携わってきました。
最初は社会福祉法人で11年勤めて、精神障害のある方の作業所での支援や、社会的入院の退院支援にも関わってきました。
その経験を生かして起業し、今はお弁当事業の就労継続支援B型を3拠点運営しています。



就労Bを3拠点、すごいです!
改めて「ひがわり弁当」は、どんな事業所なんでしょう。



生産活動は日替り弁当一本です。他のものは売っていません。
650円の日替り弁当で、配達無料。
エリアは西宮・尼崎、大阪の一部まで。
デリバリーが中心ですが店頭販売もあって、利用者さんが接客もします。作業としては盛り付けや仕込み、受注対応など。
調理は調理師が担当して、メニュー企画も行っています。


ひがわり弁当の仕事のみに絞る理由



就労継続支援B型は「工賃向上」に向けてどう生産活動の売上を作るかが課題と言われます。
弁当事業への一本化は思い切りが要りますよね。なぜ弁当事業のみに絞ったのでしょうか?



飽きないことと手作り感、そして「値段以上」を意識しています。
日替りにすることで毎日内容が変わるし、買う側も楽しみにできる。
結果として継続して注文してもらいやすいんです。



実際、どれくらい作られているんですか?



1拠点で200食くらいは普通に出ます。多い時は300食とか。
3拠点とも同じものを作っているので、全体でブラッシュアップしながら品質を上げていく形ですね。


早朝稼働と前日予約制で現場を守る



作業時間も特徴的で、朝が早いんですよね。



利用者さんの稼働は6時から来る方もいます。
14時までの枠があって、職員の調理担当は5時半から。
ランチ需要を想定していて、早いと9時過ぎには配達に出ています。



しかも前日予約制。
これは運営側としての工夫なのでしょうか?



徹底的にロスを減らすためでもありますし、職員の負担を減らす意味が大きいです。
当日に電話、FAX、LINEが鳴り続ける状態で、利用者さんの対応や在庫管理もしながら…って、本当にヘトヘトになる。
自分が経験したからこそ、前日予約にしました。


DXは「負担を減らす」ためにやる



壬生さんのSNSでの発信でもDXの話がよく出ますが、目的が一貫してますよね。



DXって言葉が先に立ちがちですけど、僕は職員の労力を下げたかったんです。
福祉現場って、職員が生産活動も支援も請求事務も全部やることが多い。生産性が低すぎるし、続けられる仕事にならない。
だから分業にこだわりました。



具体的に、どう分けているんですか?



調理担当、生活支援担当、ドライバー、事務担当に分けています。
調理担当は調理とメニュー企画に集中。
生活支援担当は面談や就労支援など支援に集中。
僕は統括しつつ、請求や助成金、会計、広報なども見ています。


分業しても、チームが分断しないための工夫



分業って、うまくいくと強いけど、分断もしやすいですよね。
そのあたりは実際やってみていかがでしょうか?



そこは意識していて、利用者さんに関わる人には福祉の研修を受けてもらっています。
調理の方も福祉の概念や知識を学ぶ。
逆に生活支援の担当も、衛生面や調理の大変さを理解する。
片方しか知らないとチームとして機能しないので。



調理の方がケース記録を書かない、みたいな役割の違いはありつつも、互いの領域を理解している状態を作っているんですね。



そうです。
僕自身は全部経験があるので、全体を見てアドバイスする役割ですね。
現場でのIT活用は「スマホ」と「自動化」



弁当の現場ってPCに張り付けないと思うんですが、どう回してます?



LINE WORKSの掲示板機能でケース記録を共有して、全員が読めるようにしています。
調理担当も含めて、関わる利用者さんの状況を知った上で現場に立てるように。



受注はどうしてるんですか?



公式LINEが中心で、一部電話やFAX。FAXもE-FAXにしています。
受注はExcelマクロで集計して、コース別に自動抽出して、LINEで配達ルートを送る。
請求書も自動作成してメール送付。
マクロはバグりやすいので、スプレッドシートに移行も考えています。



入り口が多いと整理が大変ですよね。



そうなんです。
発注も、業者ごとにメール、FAX、LINEが混在してぐちゃぐちゃになる。
だからクラウド系の仕組みで一本化して、発注作業が3時間かかっている人を30分にできたら、他の仕事に回せる。
そこを狙っています。


利用者さんに選ばれる理由は「工賃」だけじゃない



ひがわり弁当を利用している利用者さんからは、どんな反響がありますか?



もちろん1位は工賃です。毎日来たら5万〜6万円くらいになる。
また、食事提供として、まかないを無料にしています。
毎日内容が違って美味しいという声もあります。



なるほど。やはり高工賃は喜ばれますよね。
他に壬生さんがこだわってるところはありますか?



ホスピタリティです。目を見て笑顔で挨拶する。
作業を止めてでも顔を見て挨拶する。
それだけで「自分はここにいていいんだ」と感じられる。
心理的安全性を大事にしています。
音楽をかけたり、場の雰囲気がごちゃごちゃしないようにしたり、職員が優しいと言われる環境を作る。
人間関係が良い、飯がうまい、工賃が高い、最高、みたいな声は実際あります。


立ち上げの原点は「もっと良くできる」という確信



そもそも、このモデルで起業しようと思った経緯を聞きたいです。



前職で弁当のB型に関わっていて、可能性を感じていました。
調理、接客、チームプレイ、盛り付けは人手が必要で役割も多い。
精神障害のある方にも合うと思った。
もっと売れるし、工賃も上げられるという自信もあった。
でも採用や設備など意思決定が通らず、やるなら自分でやるしかないとなりました。



支援面でも、強い問題意識があったんですね。



提案してくれた人の気持ちを大事にしないとか、門前払いするとか、就職したいと言っても「まだ安定してないから無理」みたいに決めつけるとか。
熱いうちに支援した方がいいのに、と思うことが多くて。
喧嘩もしましたし、だったら自分で理想の支援をやるしかないと。
B型で、工賃が高くて、短時間でも自分のペースで働ける場所を作りたかったんです。


苦しかった創業期を越えて見えたもの



印象に残っている出来事はありますか?



嬉しいのは、利用者さんが「ここがあってよかった」と言ってくれること。
ここで友達に出会えた、就職につながった。
そういう出会いやきっかけが見えるんですよね。
作って良かったなと思います。



一方で、創業期は相当きついですよね。



きつかったです。最初は利用者さんも来ないし弁当も売れない。
最初は5食とか。電話も鳴らない。お金もない。
採用を焦って変な人を雇ってしまって、会社に行きたくないと思ったこともあります。
起業って精神やられるなっていうのは、今でもリアルに残ってます。
でも今は幸せです。


調理師を募集中!見学者にはお弁当のプレゼントも



最後に、告知があればお願いします。



調理師を大募集中です。休みも取りやすいし、休みも多い。
人間関係も良好で、職員の働きやすさにフォーカスした会社だと思います。経験が少なくても大丈夫なので、ぜひ来てほしいです。
利用者さんも、安心できる場所を意識しているので、不安が強い方でも気軽に来てください。
見学者にはお弁当をプレゼントしているので、まずは食べに来て雰囲気を見てほしいですね。



本日はありがとうございました!
高い工賃と働きやすさの両立だけでなく、利用者さんが安心して過ごせる居場所づくりまで丁寧に考えられているのが印象的でした。
分業やDXも、効率化のためだけではなく、支援の質を守るための工夫として積み重ねられていることがよく伝わってきました。
就労継続支援B型の運営や支援のあり方を考える方にとっても、多くのヒントが詰まったお話であり、新しい実践例として今後の取り組みにも注目していきたいです。


株式会社コンプリメント ひがわり弁当(就労継続支援B型事業所)
所在地:兵庫県西宮市










