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AI時代に問われるのは「誰が」作ったか?視覚障害のある人の仕事を「音楽」でつくる【就労継続支援B型 オトラボ 松本明美さん】

視覚障害のある人が「働く」ことには、スキル以前の壁がある

  • たとえば、ひとりで職場まで行くこと。
  • たとえば、「道具」を扱うこと。
  • そして、作品を「売上」につなげること。

一般社団法人ミュージックサークルLABOが運営する就労継続支援B型「オトラボ」は、音楽制作(DTM)とものづくりを軸に、その壁を少しずつ越えようとしています。代表の松本明美さんに「オトラボ」の挑戦について伺いました。

目次

オトラボ(就労継続支援B型)

項目情報
運営法人一般社団法人ミュージックサークルLABO
事業所名オトラボ(就労継続支援B型)
所在地〒533-0032
大阪市東淀川区淡路2丁目16-19 NKビル10 – 2F
電話番号06-6975-9276
FAX06-6795-9426
設立日2021年11月12日
事業内容就労継続支援B型事業所
主な対象視覚障害のある方、知的障害のある方、精神障害のある方、難病の方
定員20名
主な作業内容点字名刺の受注、点字の普及活動、点字契約書や点字メニューの制作、ネット販売の受注管理、音楽制作(DTM)、ボイストレーニング
公式サイトhttps://musiccirclelabo202.wixsite.com/home/otolabo

音楽の世界から姉の子どもが視覚障害をきっかけに福祉分野へ

やすまさ

まずは自己紹介をお願いします。
福祉の前は音楽の仕事をされていたんですよね。

松本さん

はい。福祉とは全く関係ないところで暮らしていました。
ただ、姉の子どもが視覚障害で生まれてきたことがきっかけで福祉に関心を持つようになりました。
そこから音楽をしながら、視覚障害の子どもたちに音楽を届ける活動を続けてきたんです。

やすまさ

ご家族がきっかけで音楽と福祉事業を掛け合わせた活動を始めたんですね。

松本さん

そうですね。
音楽と福祉を組み合わせて、視覚障害の方たちを中心にした取り組みを形にしたいと思い、2022年8月に大阪で就労継続支援B型「オトラボ」を開所して今に至ります。

利用者の8割が視覚障害のある方の就労継続支援B型

やすまさ

オトラボを利用している方には、視覚障害のある方が多いんですか?

松本さん

はい。今は8割ほどが視覚障害のある方です。
もちろん精神障害やその他の障害のある方も一緒に作業しています。
視覚障害に特化したB型は、地域でも多くないと思います。

やすまさ

そうですよね。珍しいと思います。

松本さん

でも、実はパパゲーノ Work & Recovery(就労継続支援B型)がある杉並区にも視覚障害のある方の支援に強い「チャレンジ」という就労継続支援B型があって、イベントをご一緒したりしています。
そういう事業所同士の横の繋がりは励みになりますね。

やすまさ

チャレンジさんですね!存じ上げております。

主な活動は「ものづくり」と「音楽制作」

やすまさ

生産活動としては、どんなことをされているんでしょうか?

松本さん

大きく2つの仕事をしています。
ひとつは、商品を自分たちで作って「ブランド」として販売していくこと。
もうひとつは音楽活動で、演奏というより音楽制作(DTM)です。パソコンに打ち込むという作曲方法で曲を作り、販売につなげる取り組みを続けています。

やすまさ

音楽で売上を立てるのは難しそうなイメージがあるのですが、実際のところいかがですか?

松本さん

正直、まだ大きくは立てられていません。
目が見えている人でも、曲を作って売上を立てて生活するのは難しい。
だから就労継続支援B型という「チャレンジできる環境」の中で、音楽の事業は育てつつ、別軸で売上になる柱も作っていくことを想定しています。
去年の8月で3周年を迎えて、ようやく「形になる音楽」が出きてきたかな、というところです。

やすまさ

3年かけて、少しずつ開所当初の想いを形にされているのですね。
視覚障害のある方と音楽制作をしていく上で、難しいと感じる点は何かありますか?

松本さん

1番難しいのは、視覚障害のある方が扱えるPCソフトや機材が限られることです。目が見えない方でも使いやすいアクセシビリティに配慮されたアプリや機材、作業環境を整える必要があります。
その上で、どこまで細かい作業を自分でできるかは試行錯誤しながら、作業分担を取り入れ、見える人、目が不自由な人の得意分野を活かし、色々な方にやってみていただいてます。

音楽でしか勝負できないと思った

やすまさ

一般社団法人ミュージックサークルLABOという法人名や、オトラボという事業所名から、音楽を軸にする方針はブラさないものなのかなと思います。なぜ「音楽」だったんでしょうか?

松本さん

視覚障害のある方が企業に就職して自立して生活するのは、現実として簡単ではありません。
例えば、WordやExcelができても、企業の事務で働けるかというと、また別の壁があります。
じゃあどこで勝負できるかと考えたとき、音楽が1つの打開策になるのではないかと考えていたんです。

やすまさ

なるほど。視覚障害のある方にとって1つの武器になるのではないかということですね。

松本さん

音楽なら、視覚障害の方が中心になって作った、というだけでも差別化になります。
自宅でも作業できるし、自分のペースでも仕事ができる。
そこを追求したかったんです。

利用者の方がPCで音楽制作に取り組んでいる様子。

AIで「作る」は加速し「音楽が埋もれる」時代

やすまさ

最近はSunoなどの音楽生成AIで、歌詞も作曲も歌も、スマホひとつでできたりしますよね。

松本さん

利用者さんもやっています。聴くたびに、世の中すごいなって。
正直、AIが出てきてちょっと怯えています(笑)。

やすまさ

音楽を作るハードルが下がって、障害のある方も含めて挑戦しやすくなった側面はありますよね。
音楽が溢れて、音楽制作が民主化していく中で、「誰が作ったのか」「どんな背景があるのか」が大事になる気もします。

松本さん

私もそれを信じてやっています。
視覚障害のある方が制作した音楽、というのは訴求力があると思っています。
でも、全国の視覚障害の団体に何百件と送ってみて見えた課題があって……。結局、足りないのはマンパワーなんです。
やりたい、学びたい。でも場所がない、教える人がいない、機材にお金がかかる。

やすまさ

なるほど。人手不足はどこの福祉施設も困っているところですよね。

松本さん

そうなんです。自分の事業所も手いっぱいで歯がゆい。
どうしたら広げられるのか、ずっと考えて、試行錯誤しています。

スキルがあっても「移動」が難しい

やすまさ

視覚障害のある方が働く上では、物理的な工夫も必要ですよね。

松本さん

おっしゃる通りです。
事業所内は道を一直線に作る、物を足元に置かない、配置を変えない。
わかる場所は案内板を出す。光が眩しい方には照明を落とす。
そういった作業環境面の工夫をしています。

やすまさ

物理的なハードルを下げることで、心理的にも挑戦する気持ちを維持できそうです。

松本さん

一般就労や就労継続支援A型へのステップアップが難しい大きな理由が、“ひとりで職場まで行く”ことなんです。
目を閉じたまま、職場まで通勤することを想像してみてください。
スキルも体力もあって働けるのに、通勤が難しい。移動にハードルがあるんです。恐怖感も出てくる。
こちらが提案しても、ご本人の気持ちが追いつかないと強く進められない。

やすまさ

確かに、初めての場所に通勤するのはとても怖そうです。

松本さん

就労スキルが高い方でも、なかなかご本人の気持ちが追いつかないと強く進められないといった就職支援の難しさがあります。

やすまさ

事業所では送迎もされているのでしょうか?

松本さん

視覚障害の方は送迎を使う方が多いです。
ただし、全部をお任せという雰囲気で送迎をするのではなく、少しでも“自分でできること”を増やしたいと考えています。
そのため、待ち合わせ場所を家の前ではなく道路側にする、など小さくても自立に向けた目標を相談しながら練習いただいてます。

大きなステージでの演奏が「自信」になる!

やすまさ

これまでの利用者さんとの関わりで印象的な出来事はありますか?

松本さん

去年、EXPO2025 大阪・関西万博のステージで音楽を演奏したのが1番印象的でした。
大阪市内で視覚障害のある方が多く在籍する就労継続支援A型事業所を運営されている(有)ファミリータイズさんから声をかけていただいて。
200人以上の視覚障害の方たちが、3日間ステージを借りてやる企画で。出演が決まったのは2週間くらい前だったのですが、元々練習していた曲があったので、舞台に立てたんです。

やすまさ

200人以上!すごい規模ですね。
ご家族や支援者の方も参加されたのでしょうか?

松本さん

はい。ご家族が仕事を休んで付き添ってくれたり、ヘルパーさんが手を挙げて来てくれたり。
関係者ゲートから入れることも、皆さん嬉しかったみたいで。
こういった大きな舞台で発表する経験は自信になりますよね。
利用者さんが演奏する姿を見て、私自身もとても嬉しい1日でした。

点字の“教科書”から生まれた「オトグラフ」

やすまさ

最後に告知したいことがあればお願いします!

松本さん

私たちは「オトグラフ」というブランドを立ち上げて、点字の教科書を素材に、ポチ袋や封筒などを作って販売しています。
オンライン(BASE)でも購入できるので、興味があればぜひ見ていただけると嬉しいです!

やすまさ

コースターなども作られているんですね!

松本さん

はい。東京のチャレンジさんと共同で、技術をお借りしながら販売しています。

やすまさ

ちなみに、点字の内容はどんなことが書かれているんですか?

松本さん

国語なら小学1年生の文章、算数、社会など、目の見える人が学ぶ内容と同じようなことが点字化されています。点字紙って分厚くて質も良いし、デザインとしても可愛いんですよ。

やすまさ

使うシーンがイメージできると、より手に取ってもらいやすそうですね。例えば、お年玉を渡す「ポチ袋」とか。

松本さん

まさに。認知を広げることが今の課題です。
思いがあっても、知られないと届かない。そこは頑張らないといけないですね。

やすまさ

少しでも多くの方に、オトラボさんが知っていただく機会になれば幸いです。ありがとうございました!

点字紙の文房具『オトグラフ』の商品の販売の様子。

一般社団法人ミュージックサークルLABO オトラボ(就労継続支援B型)
所在地:大阪市東淀川区

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この記事を書いた人

株式会社パパゲーノ代表取締役CEO / 「生きててよかった」と誰もが実感できる社会を目指して、東京で「パパゲーノ Work & Recovery(就労継続支援B型)」の運営や、支援現場のDXアプリ「AI支援さん」を開発。精神障害のある方との事業開発がライフテーマ。

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