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令和8年度介護報酬改定の焦点は何か 厚労省資料が示した「処遇改善」の3つの論点

厚生労働省が社会保障審議会介護給付費分科会で公表した資料「介護人材確保に向けた処遇改善等の課題」では、令和8年度介護報酬改定に向けて、介護分野の処遇改善をどう進めるかが重要なテーマになっています。なかでも注目したいのが、厚労省資料で示された「令和8年度介護報酬改定における処遇改善の考え方」です。ここでは、単に賃上げを行うかどうかではなく、誰を対象に、どのような仕組みで、持続可能な形で処遇改善を進めるのかが問われています。

処遇改善は、もはや先送りできない

今回の議論の前提となっているのは、令和6年度介護報酬改定で、処遇改善について令和6年・7年分の対応が行われたことです。その効果を見極めたうえで令和8年度以降の対応を検討する、という考え方が示されました。

一方で、介護分野の人手不足は今も深刻です。厚労省の資料からは、処遇改善の議論を先送りできない状況にあることがうかがえます。実態調査では、処遇改善加算を取得している施設・事業所の介護職員について、令和6年9月と令和7年7月を比較すると、基本給等が2.5%、金額にして6,130円、平均給与額が2.0%、金額にして6,840円増加したとされています。

一方で、全産業では今年度も賃上げが続いています。介護分野でも一定の改善は進んでいるものの、他産業との人材確保競争を踏まえると、それだけで十分とは言い切れない状況です。

そのため資料では、令和8年度改定を待つだけでなく、人材流出を防ぐための対応を急ぐ必要があることが示されています。実際、令和7年度補正予算には「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」が盛り込まれ、介護従事者への幅広い賃上げ支援に加えて、生産性向上や協働化に取り組む事業者への上乗せ、職場環境改善への支援も打ち出されました。

1つ目の論点「誰を処遇改善の対象にするのか」

では、令和8年度介護報酬改定では何が主な論点になるのでしょうか。資料でまず示されているのが、賃上げの対象とする職種やサービスの範囲をどう考えるかという点です。

これは、介護職員だけではなく、現場を支える幅広い職種の処遇改善をどう考えるかということでもあります。資料の前半にある委員意見でも、看護職員、相談員、事務職員、介護支援専門員などを含め、多職種にも目を向けるべきだという意見が繰り返し出ています。

介護現場は、介護職員だけで成り立っているわけではありません。現場全体を支える人材をどう確保するかという観点から見れば、令和8年度改定では、処遇改善の対象をどう設定するかが大きな焦点になりそうです。

2つ目の論点「職場環境改善と生産性向上をどう結びつけるか」

2つ目の論点は、職場環境改善と生産性向上を一体でどう進めるかです。

ここで重要なのは、厚労省の資料が、生産性向上を単なる効率化や人員削減の話として扱っていないことです。分科会での主な意見でも、生産性向上や業務効率化は、現場の負担を減らし、職員が働き続けやすい環境を整え、その結果としてケアの質の向上にもつなげていくものだとされています。

つまり、処遇改善は賃金だけの問題ではありません。給与の引き上げに加えて、記録業務の負担軽減や働きやすい職場づくりをどう進めるかも重要です。令和8年度改定では、持続的な賃上げと、現場の負担軽減をどう両立させるかが問われることになります。

3つ目の論点「持続可能な仕組みにできるか」

さらに資料では、令和9年度介護報酬改定を見据えた中長期的な課題にも触れています。そこでは、持続的な賃上げに向けた業務効率化・生産性向上の取組に加えて、処遇改善加算の趣旨を保ちながら、事業所の事務負担を軽くし、処遇改善の効果をより見えやすくしていくことも重要なテーマになっています。

これは、単にその年の賃上げ措置をどうするかという話にとどまりません。制度そのものを、現場にとって使いやすく、実際の改善につながる仕組みにしていけるかどうかが問われています。

この点は、これまでの委員意見とも共通しています。資料からは、処遇改善を一時的な対応で終わらせず、継続的な賃上げとして現場に届けるには、事業所経営の安定が欠かせないという考え方がうかがえます。赤字経営の事業所では賃上げを続けることが難しく、物価上昇や小規模事業者への配慮も欠かせません。

その意味で、令和8年度改定における処遇改善は、単に賃金水準を引き上げるだけではなく、経営の安定、制度のわかりやすさ、現場負担の軽減まで含めて考えるべき課題だと言えます。

議論は「いくら上げるか」から「どう続けるか」へ

今回の議論では大きく3つのポイントが見えてきます。

・1つ目、介護分野の処遇改善が、もはや改定時期まで待てないほど切迫した課題になっていること
・2つ目、令和8年度改定では、介護職員に限らず、現場を支える幅広い職種やサービスをどう処遇改善
 の対象に含めるかが焦点になること
・3つ目、持続的な賃上げを実現するには、職場環境改善や生産性向上、さらに制度の使いやすさまで
 含めて見直す必要があること

この3つのポイントから見えてくるのは、処遇改善をめぐる議論が、単純に「いくら上げるか」だけではなく、「どうすれば続けられるか」という段階に移っているということです。

令和8年度改定では、制度設計そのものが問われる

介護現場の人材確保が厳しさを増すなかで、令和8年度介護報酬改定では、単年度の賃上げ策にとどまらない制度設計を打ち出せるかが問われそうです。

厚労省資料の「令和8年度介護報酬改定における処遇改善の考え方」では、その方向性が端的に示されています。介護分野の処遇改善をめぐる今後の議論を考えるうえで、重要な視点が示されていると言えるでしょう。

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この記事を書いた人

株式会社パパゲーノ代表取締役CEO / 「生きててよかった」と誰もが実感できる社会を目指して、東京で「パパゲーノ Work & Recovery(就労継続支援B型)」の運営や、支援現場のDXアプリ「AI支援さん」を開発。精神障害のある方との事業開発がライフテーマ。

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