障害のある方が支援を受けながら働く就労継続支援B型事業所。令和5年度の平均工賃月額は約2.3万円であり、最低賃金法は適用されていません。労働法および障害者福祉制度の両面から、この制度設計の法的根拠と現場で生じているジレンマを整理します。
なぜ就労継続支援B型の仕事には、最低賃金が適用されないのか?
不当な労働で、搾取しているのではないか?
このような疑問に、ストレートにお答えします。
この記事は制度・判例・統計データをもとに作成していますが、最終的な法的判断が必要な場合は、弁護士や社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
結論:なぜ工賃は最低賃金の適用除外なのか?
就労継続支援B型の工賃に最低賃金が適用されない大きな理由のひとつは、制度上、利用者は「労働者」ではなく「障害福祉サービスの利用者」と位置づけられているからです。労働基準法第9条に定める「労働者」ではなく障害者総合支援法に基づく「障害福祉サービスの利用者」と位置づけられています。
つまり、労働契約に基づく労務提供の対価として金銭を得るのではなく、あくまで支援の一環として実践的な作業をしているということです。
そのため、労働基準法や最低賃金法の対象外とされており、時給数百円の事業所が多いのが現状です。
やすまさ医療機関の受診に「自己負担」があるのと同様、就労継続支援B型の利用も「自己負担」を支払って利用している方もいます。
就労継続支援B型の利用者は「労働者」ではなく、あくまで「障害福祉サービスの利用者」
就労継続支援B型とは?
就労継続支援B型は、障害者総合支援法に基づく就労系障害福祉サービスの一つです。一般企業に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して、就労の機会の提供及び生産活動の機会を提供するサービスです。
障害者総合支援法第5条第14項において、「就労継続支援」は以下のように定義されています。
通常の事業所に雇用されることが困難な障害者につき、就労の機会を提供するとともに、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、その知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与すること



重要なのは「就労の機会」と「訓練」が並列的に規定されている点です。
つまり、実践的な仕事を通した支援を提供するのが就労継続支援B型に求められていることです。
利用できる対象者
就労継続支援B型の利用対象者は、障害者総合支援法施行規則第6条の10に定められており、主に以下の要件を満たす方が対象となります。
- 就労経験がある者であって、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった者
- 就労移行支援事業を利用した結果、本事業の利用が適当と判断された者
- 1,2に該当しない者で、50歳に達している者、又は障害基礎年金1級受給者
- 上記に該当しない方で、就労移行支援事業者等によるアセスメントにより、就労面の課題等が把握されている方
一般的な企業の労働契約とは異なるため、採用・選考のようなことはしません。利用するには、市区町村から「障害福祉サービス受給者証」の交付を受ける必要があります。受給者証を取得して、初めて事業所と利用契約を結ぶことができます。



受給者証の取得には2週間〜1ヶ月ほどかかる自治体が多いです。
お住まいの地域によってルールや手続き方法が少し異なります。
生産活動の売上を工賃として支給
就労継続支援B型では、生産活動により事業者が得た収入(工賃総額)から、生産活動に必要な経費(支出)を引いた額を、事業者が作る「工賃規定」に基づいて利用者に分配しなければならないルールとなっています。
支援の対価としては介護保険に基づき国からの「訓練等給付」という報酬が売上となりますが、この給付金を工賃の原資とすることは禁止されています。
つまり、障害のある方の仕事を通して売上を立てることで、工賃を支払う必要があります。
工賃総額 = 生産活動の収入 - 経費
就労継続支援B型は、平均工賃月額が高いほど基本報酬が高くなるので、工賃の向上に向けた取組みは事業者にとっても大きなメリットがある制度となっています。





工賃を上げた方が、事業者の利益も上がる仕組みになっています。
工賃の最低基準と工賃向上の努力義務
工賃に関する最低基準として、障害者総合支援法に基づく指定基準において利用者に支払う1月あたりの工賃の平均額は月3,000円を下回ってはならないと定められています(指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準第201条第2項)。
また、利用者が自立した日常生活又は社会生活を営むことを支援するため、工賃の水準を高めるよう努めなければならないとされています。各事業所は年度ごとに工賃の目標水準を設定して取り組んでいます。



生産活動の売上を作れずに、不適正な会計処理で売上を水増ししている事業所も多いのが実情です。
そのため厚生労働省は生産活動の実態把握を厳格化するガイドラインを2025年11月に公表しています。


就労継続支援B型の平均工賃月額は「2.3万円」ほど
厚生労働省が公表した「令和5年度 工賃(賃金)の実績」によると、就労継続支援B型の平均工賃月額は23,053円でした。
平均工賃月額の推移
| 年度 | 平均工賃月額 |
|---|---|
| 令和元年度 | 16,369円 |
| 令和2年度 | 15,776円 |
| 令和3年度 | 16,507円 |
| 令和4年度 | 17,031円 |
| 令和5年度 | 23,053円 (※新算定方式) |
令和2年度に一時的に減少しているのは、新型コロナウイルス感染症の影響によるものと考えられています。
また、令和5年度は、令和6年度報酬改定にて平均工賃月額の計算方法が変更となったことにより、平均工賃月額が大幅に増加しています。
令和4年度までは前年度の「工賃支払対象者数」を分母に用いた計算方式により算出していました。令和6年度障害福祉サービス等報酬改定において、障害特性等により利用日数が少ない方を受け入れる事業所へ配慮し、前年度の「一日当たりの平均利用者数」を分母に用いた新しい算定方式を導入することとしたものです。
つまり、約6,000円の増加は主に計算方法の変更によるものであり、実質的な工賃水準が急上昇したわけではない点に注意が必要です。
就労継続支援B型には、週に1,2日ほどの利用をしている方も多いです。そのため、より現場の実情にあった支援ができる平均工賃の計算方式になったと言えます。
最低賃金と就労継続支援B型の平均工賃月額の比較
令和6年度の地域別最低賃金の全国加重平均は、時給1,055円です。就労継続支援B型(令和4年度)は平均時給が243円となっています。
つまり、就労継続支援B型の平均工賃は最低賃金の約23%にとどまっています。
| 就労Bの工賃 | 最低賃金 |
|---|---|
| 時給243円 | 時給1,055円 |
最低賃金の約4分の1程度という水準です。
この工賃に加え、多くの利用者は、
- 障害年金
- 生活保護
- 家族からの支援
などを組み合わせて生活しています。
「工賃」と「賃金」の違いとは?
就労継続支援B型で利用者に支払われる「工賃」と、一般企業で支払われる「賃金」「給与」は、法的な位置づけが異なります。
労働基準法における「賃金」の法的定義
労働基準法第11条は「賃金」を以下のように定義しています。
この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
ここでいう「労働者」とは、労働基準法第9条において次のように定義されています:
この法律で労働者とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
つまり、労働基準法上の「賃金」が成立するためには、支払いを受ける者が「労働者」(=使用従属関係のもとで労務を提供し、その対償として金銭を受け取る者)である必要があります。
障害者総合支援法における「工賃」の法的定義
就労継続支援B型における「工賃」の定義は障害者総合支援法に基づく指定基準(指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準)第201条において以下の通り規定されています。
生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払わなければならない
つまり、工賃 = 生産活動収入 - 生産活動経費 という算式で算出される「利用者への分配金」です。
工賃は「労働の対価」ではなく「障害福祉サービスの一環としての支給」と位置づけられています。この法的整理により、就労継続支援B型の利用者は「労働者」ではなく「障害福祉サービスの利用者」となり、最低賃金法の適用対象外となっています。
工賃は「障害福祉サービスの一環」であり「労働の報酬」ではない
賃金と工賃の法的位置付けの違いを整理すると以下の表の通りです。
| 項目 | 工賃(就労継続支援B型) | 賃金(一般就労・A型など) |
|---|---|---|
| 契約関係 | 雇用契約なし (障害福祉サービス利用契約) | 雇用契約あり |
| 法的根拠 | 「障害者総合支援法」に基づく障害福祉サービスの一環 | 「労働基準法」「最低賃金法」などが適用される「労働」の一環 |
| 法律の規制 | 労働時間・残業・最低賃金などの規制なし (最低月平均3,000円以上が求められる) | 労働基準法、最低賃金法、労災保険法、雇用保険法などの保護あり |
つまり、工賃は「障害福祉サービスの一環としての支給」であり「労働の報酬」ではないと位置づけられています。
このため、利用者は制度上「労働基準法上の労働者」とは整理されず、最低賃金法の適用対象から除外されています。



なお、雇用契約を結んで働くことができる方は、就労継続支援B型の「サービスの対象外」なので利用できないということになります。
なぜ生産活動は「労働ではない」と判断されているのか?
就労継続支援B型の生産活動が「労働」ではないとされている背景は5つあります。
①労働基準法上の「労働者」の定義を満たさないから
労働基準法第9条は「労働者」を次のように定義しています。
事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者
この「使用される」=使用従属関係があるかどうかが重要です。以下の5つの視点で判断されます。
- 仕事の依頼に対する諾否の自由があるか?
- 業務遂行上の指揮命令を受けるか?
- 勤務時間・場所の拘束性があるか?
- 本人に代わって他の者が労務提供可能か?(代替可能性の有無)
- 報酬が時間給・日給・出来高等、労務提供の対価として支払われているか?
就労継続支援B型では、利用者は「通所するかどうか」「作業に参加するかどうか」について基本的に自由があり、体調に応じて休むことも可能です。欠席、遅刻、早退も自由にできることが多いです。この点で「使用従属関係」が弱いと解釈されています。



「欠勤」や「解雇」という概念も就労継続支援B型にはありません。
②厚生労働省の通達で「訓練」と整理がされているから
厚生労働省は平成19年通達で、以下の4条件を満たす場合、就労継続支援B型の利用者は原則として労働者に該当しないという考え方を示しています。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ① 目的の明確化 | 定款等に「訓練・福祉的支援が目的」と明記 |
| ② 計画の策定 | 個別支援計画・訓練計画が作られている |
| ③ 契約内容 | 利用契約書に「訓練等に従事する」と記載 |
| ④ 実態との整合 | 実際の作業が計画に沿って行われている |
つまり、「労働ではなく訓練である」という枠組みを制度的に整えることで労働法の適用を回避する設計になっています。
③雇用契約を締結しないから
就労継続支援B型は、雇用契約を結ばないことが前提となっています。雇用契約がない以上、形式的には「労働者」の要件(賃金を支払われる者)を満たさないということになります。



労働基準法上の「労働者」に該当するか否かは、契約の形式ではなく実態に基づいて判断されます。
そのため、就労継続支援B型の生産活動だとしても、明らかに労働者性が認められるような実態の場合は、労働者として労働基準法や最低賃金法が適用される可能性はあります。
④生活保護・障害年金による所得保障があるから
就労継続支援B型の工賃が最低賃金を大きく下回っても制度として成り立っている背景には、利用者の生活が工賃以外の所得保障制度によって支えられているという前提があります。
| 所得保障制度 | 月額支給額の目安 |
|---|---|
| 障害基礎年金1級 | 約8.1万円 |
| 障害基礎年金2級 | 約6.5万円 |
| 生活保護 | 約10〜13万円程度(地域・世帯構成により異なる) |
就労継続支援B型も福祉サービスの一環です。生活保障は障害年金・生活保護で行い、就労継続支援B型は就労訓練・社会参加の場として機能させるという役割分担が制度設計の前提になっています。
しかし、この前提には以下のような課題も指摘されています。
- 障害年金を受給できない方(初診日要件を満たさない等)も存在する
- 生活保護を受けることへの心理的抵抗がある方も多い
- 「働いているのに生活保護」という状況への疑問
- 工賃収入が増えると生活保護費が減額される仕組み(勤労意欲が減ってしまう)



生活保護を受給していると、月1.5万円以上の工賃を稼ぐと併給調整されて手取りがあまり増えなくなります。そのため工賃を多く稼ぐことを求めていない利用者さんも少なくありません。
実際に、パパゲーノ Work & Recoveryでは「工賃の支給額」と「満足度」を分析すると相関は見られませんでした。
⑤授産施設からの歴史的経緯があるから
歴史的文脈も1つの背景にあります。就労継続支援B型が「労働ではない」とされる理由の原点は、約60年前の授産施設にまで遡ります。
明治期から戦後にかけて、「授産事業」というものが生活困窮者や障害者に「仕事を授ける」救貧・慈善事業として始まりました。これは「雇用」ではなく、恩恵的に「活動の場を提供する」という発想でした。
1949年の身体障害者福祉法、1960年の知的障害者福祉法により授産施設が制度化された際も、対象は「雇用されることが困難な者」とされ、最初から労働法の枠外で設計されました。財源は措置費(公費)が中心で、工賃は労働対価というより活動参加への謝礼でした。
2006年の障害者自立支援法で授産施設は解体され、就労継続支援A型(雇用型)とB型(非雇用型)に分かれました。当時14万人以上の利用者の多くは雇用契約を結べる状態になく、最低賃金を払えば事業所が経営破綻する実態がありました。また、障害の程度が重い方や、体調の波が大きい利用者を柔軟に受け入れるには、雇用契約の拘束を避ける必要がありました。
こうして授産施設の「非労働」という構造や思想が、現在の就労継続支援B型に引き継がれています。
最低賃金法の「減額特例」とは?
工賃に近いグレーゾーンの仕組みとして、最低賃金法第7条は、一定の条件下で最低賃金額を下回る賃金支払いを許可する「減額特例」を設けています。対象となりうるのは以下の方々です。
- 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
- 試の使用期間中の者
- 職業能力開発促進法に基づく認定職業訓練を受ける者
- 軽易な業務に従事する者
- 断続的労働に従事する者
この減額特例は「労働者」を対象とする制度です。 就労継続支援B型の利用者は制度上「労働者」ではないため、減額特例の適用の対象にそもそもなりません。
つまり、就労継続支援B型の工賃水準が低いのは「減額特例が適用されているから」ではなく、「最低賃金法の適用対象外であるから」という、より根本的な理由によるものです。



最低賃金法の「減額特例」は、賃金と工賃の中間のような位置付けです。
あくまで「労働者」が対象の制度になります。
現場で起きている「労働」と「支援」のジレンマ
就労継続支援B型の実態と法的整理にズレがある
就労継続支援B型の支援現場では、以下のような光景が日常的に見られます。
- 1日6時間、週5日にわたり製造・加工作業に従事する利用者
- 勤務時間を拘束され、自由に休憩が取れない
- 休むとスタッフから叱責され、作業を集中してやり続けないといけない
側から見ると「労働」に見える作業であっても、制度上は「訓練」「支援の一環」と整理され、労働法の保護が及ばない状況にあります。
名古屋市の社会福祉法人「ゆたか福祉会」は、この問題について消費税法の観点から国を提訴しています。同法人は、就労継続支援B型での作業は「労働」であり工賃は「役務提供の対価」であるとして、消費税の仕入税額控除を求めています。この裁判の背景には、もし「労働」と認められれば、工賃に関わる消費税の一部を控除でき、その分を工賃の引き上げに回せるはずだという考えがあります。「訓練」と「労働」の境界線を問う重要な先例となりえます。
「平均工賃月額」だけで生産活動を評価している
令和6年度報酬改定後の就労継続支援B型基本報酬は、平均工賃月額に応じて8段階に区分されています。工賃が高いほど事業所の収入が増える構造となっています。
工賃向上へのインセンティブとなる一方、支援現場に歪みを引き起こしています。
- 循環取引により訓練等給付をし金銭上し生産活動の売上を水増しする事業所が多い
- 「生産性の高い」利用者を優先的に受け入れる傾向がある
- 重度障害者や体調変動の大きい利用者の受け入れを拒否するケースが増えている
- 支援の質よりも作業効率を重視する圧力が生まれやすい
この点に厚生労働省としてもメスを入れ始めています。


「働くこと」の価値はお金だけではない
就労継続支援B型における「働くこと」の意義は、工賃の多寡だけでは測れない側面があります。厚生労働省の検討会においても、以下のような意見が示されています。
福祉的就労は、賃金の多寡にかかわらず「働くことの意義」を支える場であり、単純に廃止すべきではない
利用者からは以下のような声も聞かれます。
- 「通所することで生活リズムが整う」
- 「仲間やスタッフとの交流が生きがいになっている」
- 「社会の一員として役割を果たしている実感がある」
就労継続支援B型は、単なる「低賃金労働の場」ではなく、生活支援・社会参加・リハビリテーションといった多面的な機能を担っています。この価値を軽視することは適切ではありません。
就労継続支援B型の利用者の「労働者性」の議論
研究者の間では、就労継続支援B型利用者の「労働者性」をどう捉えるべきかについて、複数の見解が示されています。主な3つの見解を紹介します。
部分的適用論
就労継続支援B型の利用者の実態に応じて、労働関係法規の一部(労働時間規制、ハラスメント防止、安全衛生等)を選択的に適用すべきとする見解です。完全な「労働者」認定は行わないが、必要な保護は及ぼすという折衷的アプローチとなっています。
QWL向上論
QWL(Quality of Working Life:労働生活の質)の観点から、法的地位の変更よりも、作業環境・処遇・参加機会等の実質的改善を優先すべきとする見解です。
全面適用論
実態として「労働」を行っている以上、労働法を全面適用すべきとする見解です。ただし、この場合、最低賃金を支払えない事業所は運営困難となり、重度障害者の受け皿がなくなるリスクが指摘されています。
一方で、就労継続支援B型に全面的に労働者性の規制を導入してしまうと、重い障害のある人が利用しにくくなるのではないかという指摘もあります。
- 労働者性をどの範囲で認めるか?
- 認めた場合の所得保障や年金との調整をどうするか?
など、制度全体の再設計を伴う慎重な議論が必要なテーマになっています。
制度面の今後の検討課題
工賃向上施策の実効性強化
現行の「工賃に応じた報酬単価設定」に加え、重度障害者を受け入れても工賃水準を維持している場合の加算制度の拡充を検討すべきだと思います。
「福祉的就労における最低ライン」の設定
就労継続支援B型の工賃について法的拘束力のある最低基準が現行は月3,000円です。この最低基準の引き上げも論点となるでしょう。「最低賃金の3分の1」を当面の目標とする案も提起されています。
労働関係法規の選択的適用
就労継続支援B型においても、ハラスメント防止、安全配慮義務、労働時間の上限等については、何らかの形で保護を及ぼすことが検討されて良いかと思います。実際に、就労継続支援B型の利用者に対するハラスメント事案において、事業者の職場環境配慮義務が争点となった裁判例も存在します。
事業所レベルでの今後の検討課題
個々の事業所レベルで実施可能な取組みとして以下が考えられます。
- 工賃規程・収支の透明化: 工賃の決定方法、売上・経費の内訳を利用者・家族に明示する
- 高付加価値業務の開拓: 単価の高い自主製品開発、地域ニーズに応じたサービス提供を行う
- 多様な働き方・仕事の確保: 利用者の状態・希望に応じた柔軟な作業時間・内容の設定を行う
- 一般就労への移行支援: 段階的な通所時間の延長、A型や一般就労へのステップアップ支援を行う



2025年11月28日に発表された厚労省のガイドラインは必ずチェックしておきましょう!


「支援だから安くて当然」を問い直す
就労継続支援B型の工賃が最低賃金の適用外であるのは、利用者を「労働者」ではなく「障害福祉サービス利用者」だからです。この背景には、重度障害者にも柔軟に「働く場」を提供し、一般雇用とは異なる安全なステップを用意するという政策的な意図があります。
しかし現実には、「労働」と区別しがたい実態が、労働法の保護なく、最低賃金の4分の1程度の対価で行われているのも事実でしょう。
「支援だから低い工賃でも仕方ない」という前提を、改めて問い直す時期に来ているのではないでしょうか。
これは「就労継続支援B型を廃止すべきだ」という話ではありません。むしろ逆です。働くことを通じた支援には、本質的な価値があります。大切なのは、その価値を正しく認め、より多くの人に届けていくことです。



以下の3つが僕なりの「就労継続支援B型」の本質的な価値の仮説です。
労働基準法が適用されない「特殊」な制度だからこそ、一般企業や就労継続支援A型では提供できない価値を就労継続支援B型は尖らせるべきだと考えています。
| 就労継続支援B型の価値 | 具体的な内容 |
|---|---|
| ①働きたい気持ちから誰も除外しない (働く権利の保障) | 障害があっても、誰かの役に立ち、「ありがとう」と言われる。その経験は、人としての尊厳に関わるものです。「働く」とは単にお金を稼ぐことではなく、社会とつながり、自分の存在意義を感じることでもあります。 |
| ②所得面や選択肢を増やす自立支援 | 「自分には無理だと諦めている」「働くと生活保護が減って損をする」という状況から、頑張った分だけ生活が少しでも良くなる実感を持てる仕組みや動機づけが必要です。 |
| ③一人ひとりに合った個別就労支援 | 画一的な「労働者像」に当てはめるのではなく、その人の希望や強み、障害特性や体調に合わせた柔軟な環境調整、作業内容の工夫、そして寄り添う支援体制。これこそが、就労継続支援B型が本来持っている強みです。 |
「工賃はなぜ最低賃金の適用除外なのか」という問いは、同時に「私たちが障害のある人の『働く』を社会としてどのように保障したいのか」を考えることにも繋がると思います。ぜひ一度、じっくり考えてみてください。







パパゲーノでは就労継続支援B型の支援者向け研修会を定期的に開催しています。ご興味ある方はぜひ参加検討お願いします!








