このガイドブックは、パパゲーノ Work & Recovery (就労継続支援B型)の利用者さんに向けた「生成AIの使い方」の初学者向けガイドです。
AIは「完璧な先生」ではなく「頼りになるパートナー」です。だからこそ、上手な付き合い方を知ることが大切です。このマニュアルでは、AIの仕組みや注意点から、パパゲーノで使える「仕事相談BOT」やChatGPTの具体的な活用方法まで、初めての方にも分かりやすく解説します。
AIを味方につけて、「できること」を一緒に増やしていきましょう!
AIって何?なぜ使うの?
AIは「あなたの相棒」です
AI(Artificial Intelligence:人工知能)は、質問に答えたり、文章を作ったり、アイデアを出したりしてくれるツールです。
視力が悪い方がメガネを使うように、AIを使って認知機能(情報収集・記憶・思考・アウトプット)を補い「できること」を増やせます。
AIを使うメリット
- 分からないことを気軽に質問できる
- 自分のペースで学べる
- 業務の正確性とスピードを高められる
- 対人不安がある方もAIが相手なら相談しやすい
- 何度聞いても嫌な顔をされない
- 新しいことに挑戦しやすくなる(新しいことを学ぶハードルが下がる)
AIの仕組みを知ろう(大事!)
AIはどうやって答えているの?
AIの中でもChatGPTのような文章を生成するサービスは、大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)という仕組みで「次にくる言葉の確率」を計算して答えています。
例えば:
- 「おはよう」の次は「ございます」が来る確率が高い
- 「ありがとう」の次は「ございます」が来る確率が高い
- 「りんご」という言葉は「赤い」という言葉と一緒に使われる可能性が高いが「青い」のこともある
このように、AIは大量のデータから学んだパターンをもとに、「次に来そうな言葉」を予測して文章を作っています。
AIは「理解」しているわけではない
重要: AIは人間のように「意味」を理解しているわけではありません。
例:
- 人間:言葉の意味を理解して答える
- AI:確率計算で「それらしい答え」を作る
だから、AIは時々もっともらしい嘘をついてしまいます。
ハルシネーション(AIの幻覚)とは?
ハルシネーション = AIが自信満々に間違った情報を答えること
なぜ起きる?
- AIは「正しい答え」ではなく「それらしい答え」を作るから
- 知らないことでも、知っているかのように答えてしまう
例:
質問:「田中康雅さんの経歴を教えて」
AI:「田中康雅さんは日本希望丘小学校を卒業し…」
→ 存在しない情報を作り出してしまう
特に間違えやすいもの
- 固有名詞(人名、会社名、商品名など。例:「田中康雅」→「田中泰昌」と間違える)
- 数字や日付
- 最新の情報(AIの学習データは少し古い)
- 独自のルール(会社独自のルールなど)
AIを使う上で大事なこと!
- AIの答えを鵜呑みにしない
- 大事なことは必ずファクトチェックをする
- AIは「便利な道具」だが「完璧ではない機械」を認識する
AIの苦手なことや、AIの特徴の理解が、AIを上手に使うための第一歩です。
パパゲーノで使えるAI
① 生産活動:仕事相談BOT(Discord)

特徴
- Discord内で使える
- ChatGPTを裏側で動かしているイメージです
- APIという仕組みを使っています
- 業務のスレッドでごとに、仕事の業務マニュアルを読み込んでいる
- 「@仕事相談BOT」にメンションをつけ質問すると回答を得られる
- 業務の疑問をすぐに解決できる
- AIモデルの学習にデータが使われない設定
こんなときに使おう
- データ入力の手順が分からない
- 作業の進め方に迷った
- スタッフに聞くほどでもないけど、気になることがある
② 自己学習:仕事相談BOT(Discord)

特徴
- Discord内で使える
- 自己学習のチャンネルで「@仕事相談BOT」にメンションをつけ質問すると回答を得られる
- 業務ごとのスレッドよりも精度の高いAIが動いていて良い回答が得られる
- AIモデルの学習にデータが使われない設定
こんなときに使おう
- 新しいツールの使い方を学びたい
- 自己学習の進め方に迷った
- 業務とは別で気になることがある
③ ChatGPT(無料版あり・有料版は月3,000円ほど〜)

特徴
- 無料版・または有料版(月3,000円〜)を自分で課金して利用
- 幅広い質問に答えてくれる
- 文章作成、アイデア出しなど多用途
- AIモデルの学習にデータが使われない設定に「自分で変更」する必要がある
こんなときに使おう
- メールの文章を作りたい
- 分からない言葉を調べたい(ex.就労継続支援B型について小学生でもわかるように教えて)
- 就職活動の準備をしたい(ex.履歴書の文章作成、想定問答集作成)
- デザインのフィードバックをしてほしい(ex.このチラシのデザインに改善案を出して)
- 新しいツールの使い方を学びたい(ex.iMovieでのテロップ入れのやり方を教えて)
- スタッフはGoogle Workspaceを契約しているので、GoogleのAI(Gemini)を使うことができます
STEP1:仕事相談BOTで慣れよう
まずはこれから始めよう!
仕事相談BOTは、パパゲーノの業務について質問できるAIです。
使い方
例:

@仕事相談BOT この業務の目的は?
ポイント
- スクリーンショットを撮影(⌘+Shift+4)して画像を添付して質問すると何に困っているかAIに理解してもらいやすいです!
- 具体的に質問する
- 分からないことは何度でも聞いてOK
- もし答えが変だと思ったら、スタッフに確認しよう(ハルシネーションかも)


STEP2:ChatGPT(無料版)を使ってみよう
ChatGPTの開き方


最初の質問例
試しにこんな質問をしてみましょう:



就労継続支援B型について、分かりやすく教えてください



発達障害のある人が、デスクワークの仕事をする上で気をつけることを教えてください



Googleスプレッドシートで、B列が5になってる値の数をカウントしたいです。関数を書いて。


会話を続けよう
ChatGPTは前の質問を覚えているので、続けて質問できます:



もっと簡単に説明してください



具体例を教えてください



表にまとめてください
STEP3:もっと上手に質問するコツ
① 具体的に質問する
- あまり良くない例:



仕事について教えて
- 良い例:



私はパパゲーノ Work & Recoveryの利用者で、お問い合わせフォーム営業の仕事やamazonの商品登録の仕事をしています。
データ入力の仕事やで、入力ミスを減らすコツを教えてください。
② 自分の状況や背景・目的を伝える



私はパソコン初心者でGoogleスプレッドシートの勉強をしています。
Googleスプレッドシートでグラフを作る方法を、ステップバイステップで教えてください
③ 出力形式を指定する



箇条書きで教えてください



表形式にまとめてください



中学生でも分かるように説明してください
④ 具体例を求める



具体例を3つ挙げてください



実際の使い方の例を教えてください
AIが間違えたときは?
大切なこと:AIは確率で答えるので間違えます
AIは「正しい答え」ではなく「それらしい答え」を作るので、時々間違えます。
AIが間違えやすいこと(再確認)
- 固有名詞(人名、会社名、商品名など。例:「田中康雅」→「田中泰昌」と間違える)
- 数字や日付
- 最新の情報(AIの学習データは少し古い)
- 独自のルール(会社独自のルールなど)
ハルシネーション(もっともらしい嘘)の見分け方
注意すべきサイン
- 具体的な人名や日付が出てきたとき
- 「〇〇によると」と情報源を示しているとき(実際は架空の情報源のことも・・・!)
- 数字が含まれているとき(適当な数字のことがある)
確認方法
「その情報の出典は何ですか?」「本当にその情報は正しいですか?」と聞き返してみる
対処法
① 大事なことは必ずスタッフ/管理者に確認
例:提出期限、重要な手順、個人情報に関すること
② 複数の情報源で確認
AIの答え + 業務マニュアル + スタッフへの質問
③ おかしいと思ったら聞き直す
「他の方法はありますか?」
「もっと一般的な方法を教えてください」
「その情報の出典は何ですか?」
④ 固有名詞は特に注意
人名、会社名、専門用語などは必ず確認
障害のある方のAI活用事例
事例① ふきさんの場合:カウンセラーのようにAIを活用


事例② ゆあさんの場合:誤字チェックにAIを活用


事例③ みあさんの場合:ひらがなでも業務がわかるようにAIを活用


プライベートで使う場合の注意
パパゲーノのDiscordのAIを自己学習の時間で使う場合
使ってOK!
- 他の人に見られても問題ない内容
- 業務に関すること
- スキルアップの勉強
- 就職活動の準備
- パソコンスキルの学習
- コミュニケーション方法の相談
- その他、自己学習で取り組んでいる内容に関連すること
使わないで!
- 個人情報を含む内容で他の人に知られたくないこと
(パパゲーノのDiscordでAIに質問すると、履歴はスタッフなど他の方も閲覧できます)
自分でChatGPTなどの無料版を使う場合の注意点
プライベートで自分のアカウントを作って無料版のChatGPTを使うこともできますが、重要な注意点があります。
無料版は「モデルの学習に使われる」設定が「ON」になっている
無料版ChatGPTの仕組み
- 入力した内容がAIモデルの学習データとして使われる可能性がある
- つまり、他の人が質問した時に、AIがあなたが入力した内容を回答する可能性がある
具体的なリスク
- 個人情報を入力 → データに残る →別の誰かが質問した際に漏洩する
- パスワードを入力 → 特定される可能性があり危険
- 他人の情報を入力 → プライバシー侵害になる
絶対に入力してはいけないもの
- 個人情報:自分の名前、住所、電話番号、家族や友人の個人情報、マイナンバーなど
- パスワードやアカウント情報
- 他人の個人情報:スタッフや利用者さんのこと
- 業務の詳細(守秘義務のある情報):顧客情報、業務で知った情報、パパゲーノの内部情報
無料版でも質問していいことの例
- 一般的な知識の質問



「エクセルの基本的な使い方を教えて」
「履歴書の書き方を教えて」
- 個人を特定できない相談



「就職活動で緊張しない方法を教えて」
「パソコンスキルを上達させるコツは?」
もし体調やメンタルの相談をしたい場合は?
- 必ず「モデルの学習に使われる設定を「OFF」にしてからAIを使うことを推奨します。
- 最初の設定方法や使い方について、スタッフに相談してから使うのがおすすめです。


パパゲーノの有料版と無料版の違い
| 項目 | パパゲーノ提供(API経由) | 個人の無料版 |
|---|---|---|
| 学習に使われる | 使われない | 使われる可能性あり (初期設定が必要) |
| 業務情報を入力 | OK | NG |
| 回答の質 | 高い(新しいAIモデル) | 普通(古いAIモデル) |
| 利用制限 | 少ない | あり(回数制限が厳しい) |
もし間違えて個人情報などを入力してしまったら?
すぐにスタッフに報告してください
- どんな情報を入力したか
- いつ入力したか
早めに対処すれば被害を最小限にできます。不安なことがある場合も、気軽にご相談ください。
よくある質問
さいごに
AIはあなたの「可能性を広げる道具」です。AIを使って「できること」を増やしていきましょう。
でも、AIは完璧ではありません。
- 確率で答えている → 間違えることがある
- ハルシネーション → もっともらしい嘘をつくことがある
- 無料版だと初期設定で注意が必要 → (モデルの学習に使われる設定がONになっている)
だからこそ使い方が大切です。鵜呑みにしないで、うまく活用していきましょう!
困ったときは、
- まずはAIに質問してみる
- AIの答えが正しいか考えてみる
- 大事なことはスタッフに確認
- みんなで学び合う
分からないことがあれば、いつでもスタッフに声をかけてください。一緒に成長していきましょう!
このマニュアルは、利用者さんの声を聞きながら随時アップデートしていきます。
「こんな内容も知りたい」「ここが分かりにくい」などあれば、ぜひ教えてください!









