この記事の目的・ゴール

スターバックスの接客のエッセンスを取り入れて
「安心できる」「ここにいるとホッとする」「居場所」
を障害福祉の現場で作り出しましょう。
利用者対応の極意を学び
実践できるようにしましょう。
スターバックスと障害福祉の現場の共通点
人との関わりがあること、「人」を中心に置いていること
スターバックスでも障害福祉の現場でも利用者は「何か目的があって来ている」という共通点があります。
【スターバックスでの例】
・新作のドリンクを飲みに来た
・静かな環境で勉強をしたくて来た
・気分転換に来てみた
その「目的」を大事にしながら一人一人の利用者と向き合う、人と人とのつながりの中で心を通わせ合うことがスターバックスの接客では考えられています。
障害福祉の現場でも中心となるのは「サービス」ではなく、「人」です。
・今日の体調はどうか
・言葉には出していない不安はないか
・どのように接したらその人らしさが出やすいか
など一人一人と向き合う上で、スターバックスの「人」を中心に考える接客の姿勢は対応のヒントになります。

理想形は、「居心地の良さ」があること
スターバックスでも障害福祉の現場でも
・長時間居たくなる、何度でも通いたくなる
・お気に入りの場所になる
・そこでしか得られない体験ができると感じる
「居心地の良さ」があることが両者の理想形としてあることが共通しているのではないでしょうか。
カスタマイズと個別配慮
スターバックスの「カスタマイズ」と障害福祉の現場での「個別配慮」は利用者一人一人に寄り添ったものである、というところで共通していると言えます。
スターバックスの「カスタマイズ」って何?
ドリンクのアレンジができるサービスのこと。ミルクの種類を変えたり、生クリームやキャラメルシロップを追加してみたり、既存のドリンクに変更や追加をすることで自由にオリジナルドリンクが楽しめるサービス。
・甘いものが飲みたい気分
・ダイエット中だけど美味しいドリンクが飲みたい
店員さんと一緒に気分に合わせたドリンクを考えることも可能です。
障害福祉の現場での「個別配慮」って何?
障害の特性や、個人個人の苦手なこと、気になってしまうことなどを伝えることで個人個人に合わせた配慮が受けられること。
・作業中、隣の席に座っている人がいるとどうしても気になってしまう→目隠しボードを置く
・作業中、人の話している声が気になってしまう→イヤホンや耳栓をして対処する
特に障害福祉の現場では、自分だけが人と違う対応をしてもらっている、と感じさせないような「こういうやり方もある」という風に「あらかじめ選択肢として用意しているのであなただけ特別な対応をしているわけではない」、と利用者が負担に思わないような伝え方・対応が求められます。

スターバックスと障害福祉の現場の違い
商品があるorない
スターバックスはカフェなのでドリンクやフードなどの商品を販売していますが、障害福祉の現場には、特に商品はありません。そのため、商品を媒介にしてサービスや接客を行うのがスターバックスであるのに対し、利用者と支援者との直のコミュニケーション・対応が求められるのが障害福祉の現場ということになります。
・商品を選ぶ時一緒に選ぶ姿勢
・商品からホスピタリティを感じる
-フードの温め、ドリンクのコップに可愛らしいイラストが描かれている
・商品がないため利用者←→支援者のシンプルな関係性の上に信頼関係が構築されていく
「お客様」or対等な関係、「支援」という関係性
利用者との関係を表現するとどうなるでしょうか。その関係性の中で何が大切になるのかも合わせて整理します。
スターバックス:利用者は「お客様」。お金を支払う利用者とサービスを提供する店という関係性、例え利用が1回きりだったとしても1回1回のご縁を大切にする関係性。
障害福祉の現場:利用者は「支援を受ける人」であるが、支援者と対等な関係、1回きりの支援で終わらない長期的な支援が必要な関係性、他にも権利擁護・安全確保などの視点があります。
マニュアルがないor整備したほうがいい
スターバックスの接客には、マニュアルがありません。店員の自主性と創意工夫で「お客様とのつながり」を大切にすることを、重視しています。一方で障害福祉の現場では、一人一人の職員の対応に違いがあると利用者にとってあまり居心地の良い場が作られません。職員の対応の足並みを揃えるためにも、マニュアルを整備し、対応原則を作るのが良いと考えます。
障害福祉の現場でのお悩み
クレームになるのが怖くてつい無難な対応をしてしまう・・
利用者さんへの声掛けがこれでいいのか不安
スターバックスの接客のエッセンスを取り入れましょう!
スターバックスの「居心地の良さ」を作る接客と空間とは?
スターバックスの接客の理念:人々の心を豊かで活力あるものにするために
ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから
歓迎されている感を生み出す基本行動
「放って置かれていない感」「受け入れられている感」
→入店したお客様にできるだけ早く挨拶や目線を送る工夫がされています。
選びやすさを作る「メニュー提案」の工夫
「温かいのと冷たいのどちらがお好みですか?」
→選びやすい聞き方をしています。はい・いいえで答えられない、本音を引き出す質問の仕方です。
「甘さ控えめにもできますよ」
「小さいサイズからお試しできます」
→一緒に相談しながらメニューを決めていく姿勢があります。
居心地の良い空間づくり
「今日は静かに集中したい気分だな」「友達とおしゃべりしながら勉強したいな」
→座席の配置・清潔感などでどんな目的で来ている人にも居心地の良さを感じてもらえる環境を整えています。
障害福祉の現場にスターバックスのエッセンスを。
今から真似できること
エッセンス①
目線・表情・あいさつで「あなたを見ています」を伝える
【スターバックス】
最初の30秒で目線を向けて、口角の上がった表情で、「いらっしゃいませ」ではなく「こんにちは」などの挨拶をして「歓迎している」を伝えています。
【障害福祉の現場】
*普段から通所されている方の場合
その日の体調によっては緊張していることもあるかもしれません。来所したらできるだけ早く目線を合わせて挨拶をします。名前添えて挨拶するのも効果的です。次のような声かけも安心につながります。
・「今日のご気分はいかがですか。ゆっくりで大丈夫ですよ。」
・「何か気になることがあったらすぐ教えてくださいね。」
・「いつも通りでも少しペースを落としても大丈夫です。」
→小さな心がけですが、「受け入れられている」と感じさせる重要な行動です。
*初めて来所される方の場合
・「今日は来てくださってありがとうございます。」と一言添えて利用者の緊張を解きましょう。
エッセンス②
「はい・いいえ」で終わらない質問で本音を引き出す
【スターバックス】
答えが「はい・いいえ」で終わらず、嗜好や気分に応じて答えられる質問をして利用者の気分に寄り添ったメニュー提案をします。
【障害福祉の現場】
「大丈夫ですか?」だけでは本音を引き出しにくい場面が多いです。
「今日の作業、いつも通りの時間と、少し短めと、どちらが良さそうですか?」
「みんなと一緒のテーブルと、少し静かな場所と、どちらが落ち着きますか?」
【大切なこと】
・2〜3個の選択肢を示すこと
・どれを選んでも間違いではない雰囲気にすること(わからないからとりあえず「はい」と言う、を減らすことができます。)
エッセンス③
選択肢の提示で「自己決定」をささえる
【スターバックス】
一緒にメニューを考えていく接客の姿勢があります。
「ミルクの割合はどうしますか?半分にしますか?多めにしますか?」
選択肢を提示、提案をしながら一緒にメニューを決めていきます。
【障害福祉の現場】
一方的に支援のメニューを決めてしまうのではなく、相談しながら決めていく姿勢が大切です。
「今日はA作業とB作業があります。どちらから始めてみましょうか」
「通所の頻度を、週3回と週4回のどちらかで考えてみませんか」
利用者の状態に合わせてこまめに一緒に考えていくイメージがあるときめ細かな対応ができます。
エッセンス④
小さな共感とフィードバックを積み重ねる
【スターバックス】
利用者の意見を肯定し、そこからメニューを考えていくことで利用者との居心地の良い関係が構築されていきます。
【障害福祉の現場】
利用者とこまめにどのような方向性がいいのか相談しながら、進めていきます。その上で利用者の考えや気持ちを否定することなく肯定して会話をしたりフィードバックをしたりすることで居心地の良さが生まれていきます。双方が双方にとって気持ちのいい関係でいられるようにしましょう。
エッセンス⑤
忙しいときこそ「一言」を忘れない
【スターバックス】
利用者がたくさんいて忙しい時ほど、「こんにちは」「こんばんは」などの挨拶が抜けてしまったり利用者を第一に考える行動姿勢が保てなくなってしまったりしやすいですが、スターバックスでは忙しい時も、利用者を第一に考える姿勢で「利用者が歓迎されている感」を出す行動原則に則って「小さな一言」を大事にした接客が感じられます。
【障害福祉の現場】
タスクが立て込んで忙しい時は、利用者対応が疎かになりやすいですが、そんな時も「利用者を第一に考える」を忘れずに、気持ちのいい関係を作れる行動をしましょう。「小さな一言」でも利用者の心に残る安心感は大きいものです。
エッセンス⑥
利用者も支援者も疲れにくい環境づくり
【スターバックス】
落ち着いたBGMや照明、座席の配置など長く居ても疲れにくい空間作りがされています。
【障害福祉の現場】
・できるだけ複数の居場所を作る(賑やかな場所、静かな場所)
・匂い・音・光が強すぎないか支援者間で定期的にチェックする
・支援者の休憩スペースも確保し、支援者の「余裕」を保てるようにする
ケーススタディ
初回・見学対応
「今日は来ていただきありがとうございます。緊張されていませんか?」などの挨拶だけで終わらない一言を添えましょう。
【ポイント】
*緊張感を解く。
*「あなたのペースでいい」を伝えること。
通常の通所への対応
「今日のご気分はいかがですか?ご自身のペースで進めてみましょう。」
「音が気になるようでしたらイヤホンをお貸ししますし、静かな席で作業をすることもできますよ。」
利用者と相談しながらその日の方向性を決めていきましょう。
【ポイント】
*個別配慮はとても大切
-個別配慮は、各支援者の記憶に頼るとどうしても漏れが出てしまうので、記憶に頼らない仕組みを作ることが大切です。
【支援者間で情報共有】
・「環境」「声かけ」「作業内容」の3項目で簡単なチェックシートをつくること。
・朝礼や終礼で、「今日うまくいった関わり方」を1つだけ共有すること。
・支援記録に「利用者さんの反応」もセットでメモすること。
クレーム・困りごとへの対応
「上から目線で話さないでほしい」「今日は仕事のやる気が起きない」
などを利用者に言われた際、どのように対応するのが良いのでしょうか。
【ポイント】
*事実整理は感情を受け止めてから
-クレームや不満の背景には「期待とのズレ」があります。
「そう感じさせてしまったのですね」「嫌な思いをされたのですね」
まずは、関係修復の第一歩として「利用者の感じ方」を否定せずに感情を受け止めてから、事実を確認しましょう。
*「ルールだから」で終わらせない代替案提示
-障害福祉の現場では、どうしても譲れないルールや安全基準があります。
そのまま受け入れられないときに、「ルールなので無理です」だけで終わると、関係がこじれやすくなります。
「〜することはできませんが、代わりに〜することはできます、いかがですか?」
意識したいのが、「できないこと」を伝える前後に、「できること」を一緒に考えることです。
「完全にNO」ではなく「別のYES」を提示するイメージです。
明日からできる小さな1歩
安心して過ごせる場の雰囲気をデザインしよう
声の大きさや話すスピード、言葉遣いは、利用者に大きな安心感を与えることができるポイントです。
具体例:早く話しすぎないようにゆっくり話すことを意識する
命令形ではなく、「〜してもらえると助かります」のように依頼形で話すことを意識する
小さな行動を起こそう
【個人でできること】
・朝一番に、「目を見て名前を呼ぶあいさつ」を必ずする
・質問をするとき「はい・いいえ」だけで答えられない形を1つ入れてみる
・1日の終わりに、「今日うまくできた利用者対応」をメモに1行書く
【事業所でできること】
・「利用者対応ポリシー」を短い言葉でつくる
・スターバックスなど身近なお店を思い浮かべながら、「いいなと思う対応」を支援者同士で出し合う
・朝礼・ミーティングで月1回、「利用者さん対応でうまくいった事例」を共有する時間をつくる
このような心がけをすることで、「利用者との距離感」「支援者自身が感じる安心感」「事業所の雰囲気」が良くなっていきます。一歩一歩できることから始めていきましょう。


