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障害福祉サービスの「受給者」とは?手続き方法は自治体によっても違う?【福祉のDX課題】

目次

「障害福祉サービス」と「受給者」の基本をおさえよう

障害福祉サービスとは

障害福祉サービスは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」などに基づいて、市区町村が提供する公的な支援の総称です。

自宅での介護や家事サポート、就労の支援、生活訓練、グループホームでの暮らしの支援など、多様なサービスが含まれます。

「受給者」とは何を指すのか

日常的には「障害福祉サービスの受給者」という言い方をしますが、これはざっくり言うと、

「障害福祉サービスを利用するための支給決定を自治体から受けている人」

のことです。

法律上の用語としては「受給者」よりも「障害福祉サービスの支給決定を受けた者」「自立支援給付を受ける者」といった言い方が使われますが、実務や案内文、統計資料では「受給者」「支給決定者」と表現されることが多いです。

ポイントは、

  • 市区町村が「このサービスを、これくらい利用してよい」と決めた人
  • その結果として、利用料の一部を公費で負担してもらえる立場にある人

という意味での「受給者」だということです。

「障害福祉サービス受給者証」とは?障害者手帳との違い

受給者証は「サービスを使える資格」を示すもの

「障害福祉サービス受給者証」は、障害福祉サービスを利用する資格があることを示す自治体発行の証明書です。

  • いつからサービスを利用できるか(有効期間)
  • 月に何回・何時間利用できるか(支給量)
  • 利用者負担上限月額(自己負担の上限)
  • 利用できるサービスの種類 など

といった情報が記載されます。

事業所と利用契約を結ぶ際には、この受給者証を提示して、契約内容を確認してもらうことが一般的です。

障害者手帳との違い

よく混同されるのが「障害者手帳(身体障害者手帳/療育手帳/精神障害者保健福祉手帳)」との違いです。

  • 障害者手帳
    • 障害の状態についての認定・等級を示すもの
    • 税の控除、公共料金の割引、交通機関の割引などの根拠になることが多い
  • 障害福祉サービス受給者証
    • 「どのサービスを、どれくらい使えるか」という支給決定の内容を示すもの
    • 障害福祉サービスの利用契約時に必要

また、障害者手帳を持っていなくても、受給者証を取得して障害福祉サービスを利用できる場合があります

成人向け障害福祉サービス:受給者になるまでの手続きの流れ

ここでは、成人の障害のある方が就労移行支援や生活介護、居宅介護などを利用する場合を例に、一般的な流れを整理します。

厚生労働省や各種解説サイトの情報をもとにすると、典型的なステップは次のようになります。

ステップ1:自治体の障害福祉窓口に相談

  • 利用したいサービスの種類(例:就労移行支援、生活介護など)
  • 現在の生活状況・困りごと
  • 就労の希望や家族状況 など

を簡単に聞かれ、申請方法の説明を受けます。

ステップ2:申請書の提出

自治体から指定された申請書に記入し、提出します。

自治体によって異なりますが、次のような書類を求められることが多いです。

  • 障害者手帳や医師の意見書・診断書など
  • 所得状況が分かる書類(住民税の課税情報など)
  • 本人や家族の状況を記入した調査票 など

ステップ3:サービス等利用計画案の作成(計画相談支援)

原則として、障害福祉サービスを申請する場合、「サービス等利用計画案(ケアプラン)」を作成することが求められます。

  • 指定特定相談支援事業所の相談支援専門員と一緒に作る
  • もしくは本人・家族が自分で作る セルフプラン(自治体の方針による)

計画には、

  • どんな生活を目指すか(長期・短期の目標)
  • どのサービスを、どれくらい利用したいか
  • 家族や地域の支えの状況

などが整理されます。

ステップ4:市区町村による調査・審査(障害支援区分認定など)

市区町村の職員等による聞き取りや調査が行われ、障害支援区分の認定や勘案事項の確認がなされます。

  • 心身の状態
  • 日中活動の状況
  • 介護する家族の状況
  • 通勤・通学の状況 など

これらを踏まえて、サービスの種類・支給量(利用できる回数や時間)などが検討されます。

ステップ5:支給決定と受給者証の交付

審査の結果、利用できるサービスの内容・量・期間が決定されると、「障害福祉サービス受給者証」が交付されます。

この受給者証に基づいて、事業所と利用契約を結び、サービスの利用が始まります。

障害児通所支援(児童発達支援・放課後等デイサービス)の受給者証手続き

お子さんが児童発達支援や放課後等デイサービスを利用する場合、「通所受給者証」と呼ばれる受給者証が交付されます。成人と似ていますが、児童福祉法に基づき、「障害児支援利用計画案」など児童向けの計画が関わってきます。

典型的な流れ(通所受給者証)

  1. 自治体の子ども・障害児担当窓口で相談
  2. 申請書の記入・提出
  3. 障害児支援利用計画案(児童発達支援・放デイ用)の作成
  4. 自治体による審査・支給決定
  5. 通所受給者証の交付

通所受給者証は有効期間が決められており、多くの自治体では有効期限の2〜3か月前に更新案内が送られてくるとされています。

なぜ自治体によって手続きが違うのか

「同じ障害福祉サービスなのに、自治体によって必要書類や手続きの細かいルールが違う」という声は少なくありません。

その背景には、次のような事情があります。

  1. 障害福祉サービスは市区町村が実施主体
    • 法律や国の通知で大枠は決まっているものの、運用の細かい部分は市区町村が決めています。
  2. 財政状況や地域のニーズが違う
    • 人口規模、財政、利用者数、事業所の数などに応じて、支給量や運用ルールに差が出ることがあります。
  3. システムや業務フローの標準化がまだ途上
    • 自治体の基幹業務システム(障害福祉を含む)は、まさに今「標準化・共通化」が進められている最中で、完全にはそろっていません。

具体的にどんな違いがある?受給者・家族が感じやすいポイント

セルフプランの扱い

障害福祉サービスの計画を、自分や家族が作る「セルフプラン」をどの程度認めるかも自治体によって差があります。

  • 自治体によっては、セルフプランを原則不可としているところ
  • 一定条件のもとでセルフプランを認めるところ

など、実際に利用できるかどうかは市区町村の判断に左右されます。

更新手続きの時期・必要書類

通所受給者証の更新時期については、多くの自治体で「有効期限の2〜3か月前に案内」という傾向がありますが、実際の運用はさまざまです。

  • 毎回、医師の意見書を求める自治体
  • 状態に大きな変化がなければ、簡略な書類で足りる自治体

など、保護者や本人にとっての負担感はかなり違ってきます。

オンライン手続き・窓口予約の有無

  • 申請書類をオンラインで提出できる自治体
  • 事前にWebで窓口予約ができる自治体
  • いまだに紙の申請書を複写して、複数部署を回る必要がある自治体

など、デジタル化の進み具合にも大きな差があります。

障害福祉サービスのDX(デジタル化)で解決したい課題

ここからは、タイトルにもある「福祉のDX課題」を、障害福祉サービスの受給者・家族の目線で整理してみます。

情報がバラバラで、どこに何を相談すればいいか分かりにくい

生活保護、高齢者福祉、児童福祉、障害福祉など、制度ごとに窓口やシステムが分かれているため、複雑な状況にある人ほど「たらい回し」になりやすいという指摘があります。

  • どの制度に当てはまるか、職員側も瞬時には判断しづらい
  • 相談記録や支援経過が部署をまたいで共有しづらい

といった問題が、デジタル化の課題として挙げられています。

紙の書類と対面手続きへの依存

障害福祉サービス関係の手続きは、今も紙の申請書・押印・窓口持参を前提としたフローが多く、「忙しい家族や、体調が不安定な方にとって負担が大きい」という声が根強くあります。

  • 同じような内容を、複数の書類に何度も書く
  • 仕事を休んで平日に役所へ行かなければならない
  • 相談支援事業所、医療機関、学校などとの連携も紙中心

といった状況を変えるため、電子申請・オンライン相談・データ連携などの取り組みが検討・試行されています。

自治体ごとにシステムがバラバラ

デジタル庁や総務省・厚生労働省は、自治体の基幹業務システム(障害者福祉分野を含む)の標準化・共通化を進めています。

しかし実際には、

  • 各自治体が異なるベンダー・仕様のシステムを使っている
  • 障害福祉だけでなく、介護・子ども分野などとも連携させたいが、技術・予算の課題がある

といった状況があり、完全な標準化には時間がかかっているのが現状です。

先進事例も少しずつ増えている

一方で、障害福祉分野の情報提供や事業所の空き情報をアプリで確認できるようにするなど、先進的な取り組みも始まりつつあります。例えば、栃木県宇都宮市の「障害者支援アプリ」では、個々のニーズに合わせた情報提供や事業所情報の閲覧などが可能になっています。

こうした取り組みはまだ一部の自治体に限られますが、「受給者側から見た使いやすさ」を重視したDXの方向性として注目されています。

これからの「受給者」にとってやさしいDXとは

「DX」と聞くと華やかな言葉ですが、障害のある方や家族にとって大切なのは、もっとシンプルなことです。

  • 何度も同じ情報を書かなくてよい
  • 自宅からでも申請・更新の状況が確認できる
  • どの制度のどのサービスに当てはまりそうか、一目で目安が分かる
  • 相談支援事業所・医療・学校・福祉サービス事業所と、必要に応じて情報が共有される

そのためには、

  1. 申請・更新手続きのオンライン化
    • 電子申請、マイナポータルとの連携、窓口予約のデジタル化 など
  2. 「受給者」を中心にした情報設計
    • 専門用語だらけの画面ではなく、目標や困りごとからサービス選択を支援するUI
    • 視覚・聴覚・発達特性などへのアクセシビリティ対応
  3. アナログとの併用(デジタル弱者への配慮)
    • オンラインのみではなく、「紙+対面+オンライン」の選択肢を確保
    • 相談支援専門員やピアサポーターによるサポートと組み合わせる

といった視点が欠かせません。

よくある質問(Q&A)

障害者手帳がないと、受給者証は取れませんか?

障害者手帳を持っていなくても、医師の意見書などに基づき受給者証が交付され、障害福祉サービスを利用できる場合があります。実際に、受給者証は「サービス利用の資格」を示すものであり、障害者手帳とは別の制度です。

ただし、自治体によって必要書類や基準が異なるため、必ずお住まいの市区町村窓口で確認してください。

自分でセルフプランを作ってもいいのでしょうか?

原則としては可能ですが、自治体によってはセルフプランを認めない、あるいは条件付きで認める場合があります。

計画の作成には制度理解が必要になるため、できる限り指定特定相談支援事業所や障害児相談支援事業所に相談することがおすすめです。

自治体によって支給量やサービス内容の決まり方に差はありますか?

はい、あります。同じ種類のサービスでも、自治体ごとの財政状況や利用者数、事業所の数などを踏まえて支給量が決められるため、地域間で差が生じることがあります。

参考・引用元

(※25語以内での要約・引用にとどめています)

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この記事を書いた人

株式会社パパゲーノ代表取締役CEO / 「生きててよかった」と誰もが実感できる社会を目指して、東京で「パパゲーノ Work & Recovery(就労継続支援B型)」の運営や、支援現場のDXアプリ「AI支援さん」を開発。精神障害のある方との事業開発がライフテーマ。

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