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「RAG(検索拡張生成)」とは?福祉現場のAI活用を加速させる技術の基礎

(※本記事は一般的な技術解説です。医療・福祉の個人情報や記録の取り扱い、法令・ガイドライン遵守については、所属組織の規程や専門家の確認を前提にしてください。)

目次

福祉現場の「探す時間」と「確認の不安」を減らす鍵

福祉の現場では、こんな“情報の壁”が日常的に起きます。

  • 必要な情報が「支援記録」「マニュアル」「制度資料」「研修資料」などに散らばっている
  • 新人や異動者が、どこを見ればいいか分からない
  • 必要な情報は見つかったけど、現場に当てはめてどう判断するかが難しい
  • AIを使いたいが「それっぽい嘘(ハルシネーション)」が怖い
  • 個人情報の扱いが不安で、踏み出せない

ここで注目されているのが RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成) です。
RAGは、AIに“知ったかぶり”をさせるのではなく、根拠となる資料を読ませた上で回答させるための仕組みです。福祉現場の「制度・ルール・内部マニュアル制度」が多い領域と相性が良く、現場で取り入れやすい技術です。

この記事のポイント

  • RAGは「AI+検索」を組み合わせ、参照元(の資料)に基づく回答を目指す技術
  • 福祉現場は「マニュアル」「制度」「記録」など、参照すべき文書が多いためRAGを取り入れやすい
  • 成功の鍵は、生成AIの種類よりも データ整備・権限管理・評価
  • 個人情報・機微情報の取り扱いは最優先。“入れない/見せないルールを最初に決める。

RAG(検索拡張生成)とは?

RAG =「AIが答える前に、関連資料を検索し、その内容に基づいて答える仕組みです。

通常の生成AIは、学習済み知識と会話文脈をもとに文章を生成します。便利ですが、次の弱点があります。

  • 施設や法人の独自ルールは学習していない
  • 制度改正や運用変更に追随しにくい
  • “それっぽい回答”を作ってしまう(ハルシネーション)

RAGはここを補うために、あなたの組織の資料や最新の制度資料を検索して、関連箇所をAIに渡してから答えさせます。

この仕組みでは、検索で得られた資料に基づいて回答を生成するため、誤った情報が含まれるリスクを減らすことができます。

その結果、AIの回答に「出典」を表示するように設定することができ、現場で使いやすくなります。

ただし、RAGでは検索で取得した資料と、モデル自身が持っている一般知識(パラメータ)を組み合わせて回答を生成するため、ハルシネーションが完全にゼロになるわけではありません。この点には注意が必要です。

また、全ての福祉現場でRAGと相性が良いとは限らず、実際に有効に機能するかどうかは、各法人の文書整備状況やIT環境によって変わります。

福祉現場で使うなら:RAGの基本の動き

利用者(職員)の質問
   ↓
①検索:関連する資料(マニュアル/手順書/FAQ/制度資料)を探す
   ↓
②抽出:該当箇所(資料)を数段落取り出す
   ↓
③生成:資料を読んだAIが、質問に合わせて回答を作る
   ↓
回答(+参照元リンク/引用)

ポイントは、AIに「参照する資料」を渡してから書かせるところです。

なぜ福祉現場とRAGの相性が良いのか

1)“現場固有の知識”が多い

同じ制度でも、事業所の運用や記録様式は異なります。RAGなら、組織内の手順書・研修資料・運用ルールを参照できます。

2)「正確さ」が重視される

支援・ケアは、誤情報がリスクになります。RAGは「参照元の提示」をしやすく、確認しながら使うAIに向きます。

3)探す時間が大きなコストになっている

制度Q&A、加算要件、記録ルール、事故報告手順…
“探し物”は日々の負担になりがちです。RAGは、検索の手間を減らし、現場の判断に入る前の情報整理を助けるのが得意です。

福祉での活用例

※以下は個人情報を含まない文書・一般資料・組織内ルールを中心にした例です。

活用例1:法人内マニュアル・手順書の「即答窓口」

  • 「ヒヤリハット報告の手順、どの様式?」
  • 「虐待防止研修の記録、保存期間は?」
  • 「夜間オンコール時の連絡フローは?」

→ RAGで、該当手順を引用しながら手順を示せます。

活用例2:制度・加算・運用資料の要点整理

  • 「この加算の算定要件、職員配置のポイントだけ抜き出して」
  • 「制度改正資料の変更点だけまとめて」

→ “長い文書を読む負担”を減らせます。

活用例3:新人育成をサポート

  • 「このケースで、まず確認すべき観点は?」
  • 「記録を書くときのNG例を教えて」

→ 組織の研修資料に基づいて“同じ説明”をしやすくなります。

活用例4:会議資料の下書き

  • 「事故報告の概要を、法人の様式に沿って項目立てして」
  • 「家族説明のポイントを、マニュアルの該当箇所をもとに整理して」

→ あくまで“下書き”。最終判断は人が行う前提で進めます。

RAG導入で重要な4つの要素

1)どの文書を対象にするか

最初は対象を絞るのがコツです。

・よく参照される:業務マニュアル、手順書、研修資料、FAQ
・公開情報:自治体・省庁の制度資料(リンク管理)

要注意:個人情報を含む支援記録、医療情報、家族情報
※入れた瞬間にリスクが高まる文書”を混ぜないことが、導入を円滑に進めるポイントです。

2)権限管理

RAGは「検索して出してくる」ので、権限設計が甘いと事故につながります。

  • 役職・職種・事業所ごとにアクセス制御
  • ログ(いつ誰が何を検索したか)
  • 画面に「資料名」「該当箇所(ページ・見出し)」を必ず表示

3)“参照元を示す”表示と運用

福祉現場では、回答だけでなく「参照元(どこに書いてあるか)」が重要です。

  • 回答+参照元(文書名/章/リンク)
  • 重要箇所を引用(短く)
  • 「不確実なら“分からない”と言う」設定

4)評価

「便利そう」で終わらせず、最小限でも評価を。

  • 正確性(参照元と矛盾しないか)
  • 網羅性(必要情報に漏れがないか)
  • 安全性(個人情報が出ないか)
  • 現場負担(検索時間は減ったか)

RAGでも“万能”ではない:よくある落とし穴

落とし穴1:資料が古い・整理されていない

RAGは資料に基づき回答します。
古い手順書が残っていると、古い手順が“正解”として返ってきます。

対策

  • “正本”を決める(最新版の置き場を一本化)
  • 改定履歴・有効期限・廃止を明記
  • 旧版を検索対象から外す

落とし穴2:一見正しそうでも誤りを含む可能性

RAGでも、検索が外れたり、解釈を誤ると回答が不正確になることがあります。

対策

  • 参照元が確認できない場合は回答しない
  • 追加質問(確認質問)を促す
  • 検索精度を上げる(後述)

落とし穴3:個人情報が混ざる設計

支援記録や個票を無造作に入れると、検索結果に要配慮な個人情報が表示される恐れがあります。

対策

  • まずは“個人情報を含まない文書”だけで効果を確認
  • どうしても扱うなら、匿名化・マスキング・閲覧権限・監査ログを前提に、段階的に

業務マニュアルや研修資料であっても、具体的な事例紹介などを通じて、個人が特定できる情報が含まれている場合があります。RAGの対象にする前に、「個人情報を含まないか」を所属組織の規程や専門部署のチェックで確認することが重要です。

現場で進めるRAG導入ステップ

STEP
対象業務を1つ決める

例:「事故報告手順の問い合わせ」「加算要件の確認」など

STEP
資料を10〜50本に絞る

まずはよく使う資料を中心に。(数は目安として)

STEP
質問例を30個集める

現場から実際に聞かれることを中心に。(数は目安として)

STEP
回答に参照元の表示を必須化

リンク・引用

STEP
テスト→改善

検索が外れやすい質問を見直す

最初から“全部の知識”を入れようとすると失敗しやすいです。
RAGは、まず限定した範囲で効果を確認し、段階的に対象を広げる進め方が有効です。

検索精度を上げるコツ

  • 文章を「見出し単位」で区切る(長すぎると当たりにくい)
  • 言い方が違っても探せるようにする(例:面談聞き取りヒアリング
  • “よくある質問”を先に整備する(FAQはRAGの得意分野)
  • 重要文書は優先度を上げる(最新版・正本を優先)

現場で使える質問集(そのまま使える例文)

※個人情報は入れず、記号化・匿名化して使ってください。

あなたは法人内マニュアルに基づいて回答するアシスタントです。
次の質問に対し、根拠となる資料名と該当箇所を示しながら、手順を箇条書きで説明してください。
根拠が見つからない場合は「資料内で確認できません」と答え、追加で確認すべき情報を質問してください。

質問:夜間の緊急時連絡フローを教えて。
次の制度資料の要点を、現場向けに3分で読める分量にまとめてください。
・変更点
・現場で影響が出るポイント
・確認すべきチェックリスト
根拠として参照した章・ページ(見出し)を示してください。

まとめ:RAGは現場で使いやすくする工夫

RAGは、生成AIを「便利な文章作成」にとどめず、現場のルール・制度・マニュアルに基づく支援へつなげる技術です。

  • 個人情報を含まない範囲から始める
  • 根拠の提示とアクセス権限を最初に整える
  • 限定した範囲で検証し、段階的に対象を広げる

この3点を押さえるだけでも、導入時のリスクを抑えつつ活用を広げやすくなります。

FAQ(よくある質問)

Q1. RAGを入れればハルシネーションはゼロになりますか?

ゼロにはなりません。

RAGを使っても、「関係のない資料が検索される」「資料の一部だけを都合よく解釈してしまう」といった理由で誤答が出ることはあります。
そのため、重要な判断では必ず参照元の文書を人が確認する前提が必要です。


ただし、該当箇所に基づいて答える設計にできるため、誤りの検知・修正がしやすくなります。

Q2. どんな資料から始めるのがいい?

まずは、個人情報を含まない「業務マニュアル」「手順書」「研修資料」「FAQ」がおすすめです。現場の問い合わせが多い領域ほど効果が出ます。

Q3. 施設の支援記録をRAGに入れてもいい?

慎重に検討が必要です。機微情報が多く、権限設計・ログ監査・匿名化などが欠かせません。まずは非個人情報の文書で効果を確認してから段階的に検討するのが安全です。

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この記事を書いた人

株式会社パパゲーノ代表取締役CEO / 「生きててよかった」と誰もが実感できる社会を目指して、東京で「パパゲーノ Work & Recovery(就労継続支援B型)」の運営や、支援現場のDXアプリ「AI支援さん」を開発。精神障害のある方との事業開発がライフテーマ。

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