この記事の目的・ゴール

ディズニーの接客理念や行動基準を知り、
そのもたらす効果から、違いや真似できるポイントを学び
実践するための小さな1歩を踏み出すこと。
ディズニー特有のワードについて
ディズニーでは、ご存知の方も多いかもしれないのですが、特有のワードが用いられます。
基本的なワードについてご紹介しますので、覚えてこの記事を読んでみてください。
・キャスト:従業員のこと。役割を演じる出演者という意味合いがあります。
・ゲスト:来園者のこと。
ディズニーと障害福祉現場の異なるポイント
ディズニーと障害福祉現場には、前提や関係性など異なるポイントがたくさんあります。真似できるポイントを学ぶ前に、違いについて知っておきましょう。
目的
ディズニー:「楽しさ」「夢」「非日常」を提供すること。ゲストが「楽しい」「また来たい」などの気持ちとなり素晴らしい思い出を作ることを目的としています。
障害福祉現場:「安心して暮らせる」「できることが増える」「権利が守られる」といった生活や人生に関わることが大切で、障害を持つ人の生活の質の向上と自立支援が主な目的となっています。その人ができることを最大限引き出し、支援することが大切です。
大事にしていること
ディズニー:
①非日常感の提供:ゲストが「現実ではない世界に来た」と感じることが重要です。
②テーマ性:ディズニーキャラクターやテーマに基づいた世界観を創造し、その中でゲストが楽しめるようにします。
③笑顔と楽しさ:ディズニーのキャストは、常に笑顔でゲストと接し、ポジティブなエネルギーを提供します。
障害福祉現場:
①相手のペースに合わせる:各々のペースや状態に応じた支援が必要です。無理をせず、少しずつできることをサポートします。
②インクルーシブ(共生):障害のある人もない人も共に生活する社会をつくることを目指しています。差別や偏見をなくし、障害を持つ人々を社会の一員として尊重します。
③個別の支援計画:支援計画を一人ひとりに合わせて立て、無理なく自立を目指した支援を行います。
関係性
ディズニーでは、ゲストは「お客様」です。提供する側、楽しむ側という役割が明確になっています。また、関係性は一時的な、非日常のもので、困りごとはその場で完結させるのが普通です。
障害福祉現場では、利用者は「お客様」であると同時に、「権利の主体」です。継続的・日常的な関係性の中で、「その人らしく生きる」ことを支えます。距離感は、ディズニーよりも慎重で長期的です。信頼関係が特に重要で関係性そのものが支援の土台になります。
ディズニーと障害福祉現場の共通点

利用者の幸せを最大化すること
利用者目線で比べることで見えてくる4つの障害福祉現場の可能性
〜利用者が感じるディズニーのいいところとは〜
①アトラクションだけではなく、「人」も含めてディズニーという場が形成されています。
*障害福祉現場でも、1つ1つの事業所のカラーというものを打ち出せる可能性があります。
②キャストはみんな笑顔です。笑顔から始まる会話は、きっとポジティブで心地良い会話でしょう。
*障害福祉現場でも前向きな感情をプレゼントすることができます。
③心をひらく積極的な会話、声かけが心掛けられています。
*障害福祉現場でも何か用事がある時だけ話をする関係ではなく、雑談など積極的にコミュニケーションをとることで、利用者の心に、「気にかけてもらっている」という温かい感情を残すことができます。
④ゲストが話している意図を汲み取り、気持ちのいいコミュニケーションをしています。
*障害福祉現場でも利用者の本音を大切に、意図を汲み取ることで心に響くコミュニケーションができます。
ディズニーの接客理念と行動基準
接客理念

すべてのゲストにハピネスを提供すること
行動基準
「The Five Keys~5つの鍵~」(Safety, Courtesy, Inclusion, Show, Efficiency)として定められています。
Safety(安全):安全な場所、安らぎを感じる空間を作り出すために、ゲストにとっても、キャストにとっても安全を最優先すること。
Courtesy(礼儀正しさ):”全てのゲストがVIP”という理念に基づき、言葉づかいや対応が丁寧なことはもちろん、相手の立場にたった、親しみやすく、心をこめたおもてなしをすること。
Inclusion(インクルージョン):さまざまな考え方や多様な人たちを歓迎し、尊重すること。すべての鍵の中心にあり、他の4つの鍵のどれにも深く関わる。
Show(ショー):あらゆるものがテーマショーという観点から考えられ、施設の点検や清掃などを行うほか、キャストも「毎日が初演」の気持ちを忘れず、ショーを演じること。
Efficiency(効率):安全、礼儀正しさ、ショーを心がけ、さらにチームワークを発揮することで、効率を高めること。

ディズニーでは、「安全が最優先」となっています。5つの行動基準の中で一番重要ということです。
例えば、こぼれたジュースの清掃を行うキャストは、しゃがんだ姿勢で地面を拭うことはせず、立ったまま足を使って拭き取ります。これは、しゃがんだ状態では、周りに気を取られているゲストが気づかずにぶつかり、転んでしまう可能性があるためです。
一見、足で拭く作業は丁寧さに欠けるように見えますが、Courtesy(礼儀正しさ)やShow(ショー)よりも、Safety(安全)を優先して行動する理由によるものです。
ディズニーの行動基準と障害福祉現場の行動基準
行動基準の優先順位
行動基準のディズニーでの優先順位:
① 安全 → ② 礼儀正しさ → ③ ショー(楽しさ) → ④ 効率→⑤インクルージョン
行動基準の障害福祉現場での優先順位:
① 安心・安全 → ② 尊厳・信頼 → ③ 支援の質 → ④ 効率→⑤誰も排除しない支援
第一位:命と安心を守る
ディズニー
具体例①子供が柵に登ろうとしている
対応:接客やショーを中断してでも即介入
具体例②アトラクションに異常が少しでもある
対応:運行停止
障害福祉現場
具体例①利用者が不安定な様子
対応:作業や訓練を一旦中止
具体例②パニック兆候が見えた
対応:指導・声かけより環境調整を最優先
第二位:尊厳を守る=礼儀、信頼をつくる
ディズニー
具体例:ゲストのルール違反
✔︎怒らない
✔︎恥をかかせない
→低い姿勢・柔らかい言葉
障害福祉現場
具体例:利用者が失敗した時
✔︎人前で注意しない
✔︎命令口調にならない
「一緒に確認してみましょう」
「今は難しかったですね」
第三位:安心できる世界観・支援の質
ディズニー
✔︎キャストは常に役割の中
✔︎世界観を壊さない対応
障害福祉現場
✔︎支援員の態度が安定している
✔︎日によって対応が極端に変わらない
→この人がいてくれるなら大丈夫、という空気
第四位:効率
ディズニー
✔︎待ち時間短縮・動線整理
→これは、行動基準の「安心」「礼儀正しさ」「ショー」を守った上でのこと
障害福祉現場
✔︎記録・業務の効率化は大事
→急かす・予定を詰め込む、はNG
「今日はペースを落とします」
「安全と安心を優先します」
第五位:インクルージョン(多様な個性を尊重し共存)
ディズニー
✔︎障害・年齢・言語に関係なく楽しめる設計
✔︎「特別対応」ではなく「最初から想定」
具体例:DAS(ディスアビリティアクセスサービス)
アトラクションの入り口で*手帳やアプリ(ミライロID)を提示すると今の時間から待ち時間をプラスした時刻に戻ってくるように指定され、普通に列に並んで待つのではなく、ベンチやレストランなど待機列以外の場所で時間になるまで自由に過ごすことができるサービス。障害のある方や医学的・身体的事情により列に並んで待つことが困難な方に配慮したサービス。
*手帳:
身体障害者手帳
精神障害者保健福祉手帳
療育手帳(愛の手帳など)
被爆者健康手帳
戦傷病者手帳
障害福祉サービス受給者証
障害福祉現場
✔︎「合わせさせる」のではなく「合わせる」
「この人に合う方法を探そう」
「違いは前提」
ディズニー流を障害福祉現場でいかに取り入れるか
ディズニーのような魔法は小さなことの積み重ねから
- 目を見て笑顔であいさつする
- 呼びかけられたら、手を止めて相手の方を向いて対応する
- 子どもや車いすの方には、目線の高さを合わせて話す
- 名前を呼んで声をかける
どれもシンプルで大切なことです。話す相手に温かい心をもって接しましょう。
オンステージとバックステージ
オンステージ
ディズニー:ゲストの前に出る場所は、オンステージであり、表情や立ち居振る舞いに気を配ることが求められます。キャストという名の通り、ディズニーでの自分の役割を演じきります。
障害福祉現場:支援者も「見られている存在」です。
・廊下ですれ違う時に無言ですれ違う
・作業しながら目を合わせず返事だけする
・ため息や不機嫌な表情をそのまま表に出してしまう
など一見小さなことと思われることが、利用者の気持ちを不安にさせてしまうことに繋がります。
利用者の前はオンステージ、と意識するだけで自然と姿勢や表情にも気持ちを向けやすくなります。
バックステージ
ディズニー:ゲストから見えない場所は、バックステージになります。休憩・準備・他のキャストへの指示出し・感情の整理等に使います。
障害福祉現場:利用者から見えない場所は、バックステージと捉えましょう。バックステージでは、利用者の前に出る前の準備段階です。支援員同士でも体調や気分を確認し合って、いいコンディションで利用者との信頼関係構築ができるようにしましょう。
誰に対しても公平な態度
ディズニー:ディズニーランドでは、誰に対しても公平な態度が心がけられています。その理由は、ディズニーの世界観は、「安心」「夢」「信頼」の上に成り立っているからです。1人でも冷たくされた・見下された・後回しにされた人がいると、その人にとっての”魔法“は解けてしまいます。なので、誰に対しても「平等」ではなく「公平」な態度は大切なのです。
障害福祉現場:利用者に対しての態度が人によってまちまちだと、利用者側からすると不公平感につながりやすいです。誰に対しても安定して一貫した態度を取ることで、利用者との信頼関係構築が上手に進んでいきます。
注意点:お客様扱いし過ぎない
ディズニー:利用者はお客様です。先回りの支援や世界観の維持やおもてなしの心などが大切で守られています。
ディズニーでは、利用者はお客様ですが、障害福祉現場では利用者はお客様であると同時に権利の主体です。
支援者は、利用者がその人らしく人生を生きるための支えです。先回りの支援はせず都度本人確認を入れること、おもてなしではなく権利保障ベースの支援をすることなどディズニーとは異なる点があります。ディズニーとは違い長期的な視点でその人が自分の足で歩いていけるようにコミュニケーションをとっていきましょう。自立支援よりもその場の満足度だけを追求してしまうと、それは自立と社会参加の支援から離れてしまいます。
特性に応じた説明や環境配慮
ディズニー:案内板やピクトグラムなどが多用されています。視覚的な情報を増やすことで安心して行動しやすくなります。
障害福祉現場:ディズニーよりも一歩踏み込んだ個別の配慮が必要です。コミュニケーションだけでなく、障害特性に応じた環境の配慮をすることが大切です。
具体例①知的障害・発達障害のある方への説明、案内
わかりやすい説明それ自体が大きな支援になります。
・一度に伝える情報は、1つか2つまでにする。
・長い文ではなく、短い文で区切って伝える。
・ルールを「してはいけないこと」ではなく「してほしいこと」で伝える。
例:「走らないでください。」→「ここではゆっくり歩きます。」
具体例②精神障害・発達障害のある方への「安心感」のつくり方
精神障害や自閉スペクトラム症などの方は環境の変化や人の雰囲気にとても敏感な場合があります。
・声の大きさや話すスピードを相手に合わせて調整する。
・予定変更がある時は、できるだけ早くわかりやすく伝える。
・人が多い・音が大きい場所が苦手な方には、静かな場所を提案する。
・パニックや不安が高まっている時には、説得よりも「そばにいること」「環境を落ち着かせること」を優先する。
利用者を「困った人」と見るのではなく、「今困った状態にいる」と捉えることで支援者の視点も変わります。
具体例③身体障害・感覚過敏への環境調整
身体障害や感覚過敏のある方にとって、環境の配慮があることは、大きな接客の一部です。
・車いすの方に、いきなり後ろから押さず、「押しましょうか?」と確認する。
・感覚過敏のある方には、できるだけ光やにおい、音を調整する。
明日からできる小さな1歩
チームで取り組む利用者対応の見直し
その1
支援者が事業所の中の誰であっても、利用者に一定した安定した対応をするためには、行動基準を記した「私たちの約束」のようなものを作ってみても良いでしょう。
例:①私たちは、本人の気持ちを聞いてから支援方法を決めます。
②私たちは、気になることがあれば一人で抱え込まずに相談します。
短く、覚えやすく、毎日意識できる言葉にすることがポイントです。
その2
利用者やそのご家族の声は、「生きたフィードバック」です。
大切なのは、声を寄せてくれたことに対して感謝の気持ちを持つことと改善したことを分かりやすく共有することです。
・以前いただいた声を元に、「〜」を改善しました。
とお知らせをすることで、「ここは本当に話を聞いてくれる場所なんだ」という信頼感が深まります。
いいことを続けるための工夫
・行動目標を紙に書いてロッカーやデスクに貼る。
・朝礼で「昨日できたこと」を1つ共有する。
・月に一度、利用者対応についての「良かった事例」を出し合う。
「意識する」だけでは忙しさの中であっという間に忘れてしまいます。見える化や仕組み化で続けやすい工夫をしましょう。

関わり方は双方異なりますが、
利用者の幸せを最大化するための
日々の努力を絶え間なく続けていきましょう。

