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障害者チャレンジ雇用制度とは?【就労継続支援B型の次のステップとしても挑戦しやすい短時間雇用】

「就労継続支援B型を利用しているけれど、この先どう働いていけばいいのか分からない」
「一般就労はまだ不安だけれど、今よりもう少し収入を増やしたい」

そんな思いをお持ちの方に向けて、官公庁などで行われている「障害者チャレンジ雇用制度」と、一般企業で利用できる「障害者短時間トライアルコース」について、やさしく解説します。

【この記事で分かること】
・チャレンジ雇用と短時間トライアルの基本的な仕組み
・就労継続支援B型から次のステップにつなげるときの具体的な流れ
・利用を検討するときのポイントと注意点

就労継続支援B型から、企業にフルタイム勤務で就職することを次の選択肢にするのではなく、「短時間から始めて少しずつ広げる」という選択肢を知ることで、自分に合ったペースで働き方を考えるきっかけになれば幸いです。

目次

チャレンジ雇用制度とは?

官公庁・自治体で行う「ステップアップ型」の雇用制度

障害者チャレンジ雇用制度(以下、チャレンジ雇用)は、官公庁や自治体などの行政機関が、障害のある方を非常勤職員として一定期間雇用し、その経験をもとに一般企業への就職をめざしてもらう制度です。

  • 雇用主:各府省庁・地方自治体などの行政機関
  • 雇用期間:1年単位で、1〜3年程度が一般的
  • 雇用形態:非常勤職員(会計年度任用職員など)
  • 目的:行政機関での就労経験を通じて、一般企業で働く自信・スキルを身につける

東京都教育委員会の例では、チャレンジ雇用として「教育事務補助員」を採用し、事務補助や環境整備業務に従事してもらいながら、最長3年間の就労経験を一般就労につなげる仕組みになっています。

チャレンジ雇用が生まれた背景と目的

「いきなり企業への就職」が難しい人への橋渡し

厚生労働省は、就労経験が乏しい障害のある方の一般就労を増やすために、チャレンジ雇用の推進と拡大を図ってきました。

背景には次のような課題があります。

  • 就労経験がほとんどないと、企業側が採用に慎重になりやすい
  • 働いた期間が短い・ブランクが長いと、履歴書だけでは力を判断しづらい
  • 障害の特性上、一気にフルタイムで働き始めることが難しいケースが多い

そこで、行政機関で1〜3年の「訓練を兼ねた就労期間」を用意し、就労実績と自信をつけてから一般企業に応募してもらう、という形がチャレンジ雇用のコンセプトです。

チャレンジ雇用の働き方・仕事内容・応募方法

勤務時間・勤務形態のイメージ

勤務条件は自治体ごとに異なりますが、例として東京都教育委員会版チャレンジ雇用では次のような形態が示されています。

  • 任用期間:1年以内(再度任用により最長3年)
  • 勤務日数:週4日
  • 1日の勤務時間:6時間 または 7時間45分
  • 給与:日額基準をもとに月額を算出(勤務日数で変動)
  • 社会保険:共済組合・厚生年金・雇用保険などを適用

他の自治体でも、「非常勤職員として1〜3年」「最大8時間・勤務時間は応相談」という形で運用している例が多く、フルタイムに近い働き方から、短めの勤務時間を相談しながら決めるケースまで幅があります。

主な仕事内容

仕事内容は行政機関や部署によって異なりますが、よくある例としては以下のような業務があります。

  • 資料の印刷・封入・仕分け・製本
  • 郵便物の受け取り・仕分け・配布
  • パソコンでのデータ入力・簡単な資料作成
  • 庁舎・校舎内外の清掃などの環境整備
  • 学校や庁舎を巡回しながらの業務 など

いわゆる「事務補助」「バックオフィス業務」が中心で、一般企業でも活かしやすい基礎的な事務スキルやビジネスマナーを身につけやすい内容になっています。

応募方法の基本

募集方法の一例として、以下の流れが紹介されています。

  1. 各自治体・省庁がチャレンジ雇用の求人票をハローワークに提出
  2. 応募条件(障害者手帳の種類・居住地など)を満たした方が応募
  3. 書類選考、筆記試験、面接、実技試験などで選考
  4. 一般職の非常勤職員として採用(試用期間を経て本採用)

募集時期は4月・10月採用に合わせて、その数か月前から案内されることが多く、ハローワークと自治体の公式サイトをチェックしておくことが重要です。

チャレンジ雇用と「障害者短時間トライアルコース」の違い

① チャレンジ雇用:行政機関での就労経験づくり

  • 働く場所:官公庁・自治体など行政機関
  • 雇用期間:1〜3年の非常勤職員としての雇用
  • 期間終了後:別の一般企業への就職をめざす
  • 対象:就労経験がほとんどない、またはブランクの長い障害のある方 など

② 障害者短時間トライアルコース:一般企業での「短時間からの試行雇用」

厚生労働省の「障害者短時間トライアルコース」は、一般企業が障害のある方を短時間から試行的に雇用する際に利用できる助成金付きの制度です。

主なポイントは次の通りです。

  • 雇用主:一般企業
  • 目的:将来の継続雇用を前提に、短時間で試行的に雇用する
  • 雇入れ時の所定労働時間:
    • 週10時間以上20時間未満からスタート
    • 期間中に20時間以上を目指す
  • 期間:3〜12か月
  • 対象となる方:精神障害のある方または発達障害のある方で、制度の利用に同意している方

つまり、

  • チャレンジ雇用:行政機関での「訓練を兼ねた就労期間」
  • 短時間トライアル:一般企業での「短時間から始める試行雇用」

という違いがあります。

就労継続支援B型の現状と「次のステップ」が必要な理由

B型の働き方と平均的な状況

就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに、障害のある方が自分のペースで生産活動などに取り組める福祉サービスです。

特徴的なデータとして、次のようなものがあります。

  • B型事業所の平均労働時間:週22時間(平日5日換算で1日4.4時間程度)
  • 多くの事業所で、週1日・1〜2時間から利用を開始できる
  • 雇用契約は結ばず、賃金ではなく工賃が支払われる
  • 2023年度の平均工賃:月額約2万3,000円(生活費としては不十分な水準)

日本財団「就労継続支援B型事業所調査報告書追加資料 工賃に関するいくつかの論点について」

一般就労への移行率は「約1割前後」

厚生労働省のデータをもとにした分析では、B型事業所から一般企業への就職に移行する割合は、サービス利用終了者のうち約10%前後とされています。

  • 2021年度:10.1%
  • 2022年度:10.7%
  • 2023年度:11.2%

年々やや増加しているものの、「B型だけで一般就労までたどり着く」ケースはまだ少ないのが現状です。

2025年以降は「就労選択支援」で入口が整理される

2025年10月以降、新たに就労継続支援B型を利用する方は、原則として最初に「就労選択支援」を利用して、自分に合ったサービスを一緒に検討してからB型を選ぶ仕組みに変わります。

これは、「B型をゴールにしてしまう」のではなく、「どのサービスからどのようにステップアップするか」を整理するための見直しといえます。

B型からチャレンジ雇用・短時間雇用に進むメリット

B型で生活リズムを整えたり、1日数時間の作業に慣れてきた方にとって、チャレンジ雇用や短時間トライアルコースは「一般就労に向けた現実的な次の一歩」になり得ます。

1. 雇用契約のもとで働く経験ができる

  • B型:雇用契約なし(労働基準法・最低賃金の適用外)
  • チャレンジ雇用・短時間トライアル:雇用契約に基づいて働く

雇用契約が結ばれることで、

  • 出勤・退勤時間を守る
  • 有給休暇や勤怠管理に関するルールに沿って働く
  • 上司や同僚との報連相を行う

といった、「一般企業で求められる前提条件」を体験しやすくなります。

2. 勤務時間・負荷を段階的に増やせる

  • B型:週1日・1〜2時間からスタートできる柔軟さがあり、平均は週22時間
  • 短時間トライアル:最初は週10〜20時間未満から始め、期間中に20時間以上を目指す

たとえば、

B型で「週3日・1日3時間」に慣れたあと、
→ チャレンジ雇用で「週4日・1日6時間」に挑戦
→ あるいは短時間トライアルで「週15時間」から「週20時間以上」へ増やす

といったステップを踏むことで、無理なく体力・生活リズム・通勤の負荷を調整しながら一般就労に近づけます。

3. 事務補助・環境整備など、汎用性の高いスキルが身につく

チャレンジ雇用の業務は、郵便物の仕分け、データ入力、資料作成、清掃・環境整備など、一般企業でもよくある業務です。

B型の作業では軽作業や製造系が中心であることが多く、事務職への転職を目指す場合には、チャレンジ雇用で事務系のスキル・ビジネスマナーを補うことができます。

4. 支援者がつきやすく、職場定着の準備になる

チャレンジ雇用では、障害者雇用支援員などが配置され、業務の進め方や職場適応、就職活動の支援をしている例があります。

  • 困ったときに相談できる人がいる
  • ハローワークや就労支援機関とも連携してくれる
  • 一般就労後も、定着支援につなぎやすい

こうした環境は、B型から一足飛びに一般就労へ移るよりも、「失敗しにくいステップアップ」の場になりやすいといえます。

利用までの具体的なステップ(本人・家族・支援者向け)

「B型の次のステップとしてチャレンジ雇用や短時間トライアルに挑戦したい」というケースを想定して、現実的な動き方を整理します。

ステップ1:目標と不安を言葉にする

  • どのくらいの時間なら働けそうか
  • どんな仕事に興味があるか(事務・軽作業・清掃・ITなど)
  • 体調面・対人面で不安なポイントは何か

を、本人・家族・支援員で共有します。

ステップ2:主治医・相談支援専門員・B型の支援員に相談

  • 「B型から一歩進みたい」
  • 「週◯時間くらいならチャレンジできそう」

といった希望を伝え、就労選択支援や就労移行支援、A型、チャレンジ雇用、短時間トライアルなどの候補を一緒に整理します。

ステップ3:ハローワーク・障害者職業センターに相談

  • チャレンジ雇用の募集情報(官公庁・自治体)
  • 障害者トライアルコース・短時間トライアルコースを利用している企業の求人

などについて、ハローワークの専門援助部門や障害者職業センターで相談できます。

ステップ4:見学・実習・トライアルの機会を積極的に使う

  • 行政機関の職場見学や実習
  • 一般企業での職場体験・短時間トライアル

を通じて、「自分に合うかどうか」「環境が安心できそうか」を確認することが大切です。

企業・自治体側のメリットと注意点

法定雇用率の引き上げと短時間雇用のカウント

日本では、障害者雇用促進法に基づき、事業主には障害のある方を一定割合以上雇用する義務があります。厚生労働省の資料によると、民間企業の法定雇用率は次のように引き上げられています。

  • 2021年度まで:2.3%
  • 2024年4月〜:2.5%
  • 2026年7月〜:2.7%

さらに、週10〜20時間未満で働く精神障害のある方や、重度の身体障害や知的障害のある方も、雇用率上0.5人としてカウントできる仕組みが導入され、短時間雇用への支援も強化されています。

行政機関・企業にとってのメリット

  • 障害のある方の就労支援を通じた社会貢献
  • ダイバーシティ推進・組織の学びの機会
  • 人材不足分野での戦力確保(事務・清掃・バックオフィスなど)

注意点・リスク

一方で、JSHなどの解説では、指導担当者の負担や早期離職のリスクにも触れられています。

  • 指導・フォローを特定の担当者に任せきりにすると負担が集中する
  • 職場側の準備不足により、早期離職やミスマッチが起こりやすい

そのため、

  • 職場全体での支援体制づくり
  • ジョブコーチや就労支援機関との連携
  • 勤務時間・業務内容を段階的に調整する仕組み

が、成功のカギになります。

まとめ:無理のないペースで「福祉から雇用」へつなぐ

最後にポイントを整理します。

  • チャレンジ雇用制度は、官公庁・自治体が障害のある方を非常勤職員として1〜3年雇用し、その経験をもとに一般就労につなげる仕組み
  • 障害者短時間トライアルコースは、一般企業で週10〜20時間未満から始められる短時間雇用の制度で、将来の継続雇用を前提とした試行的な雇用
  • 就労継続支援B型は、週1日・1〜2時間から利用できる柔軟さがある一方、平均工賃は月2万円台、一般就労への移行率は約1割前後にとどまっている
  • B型で生活リズムや基礎的な就労習慣を整えたうえで、チャレンジ雇用・短時間トライアルという「短時間からの雇用」に挑戦することは、無理なく一般就労へ近づく現実的なステップになりうる

読者に伝えたいメッセージとしては、

「B型を利用しているから一般就労は無理」ではなく、
「B型で整えた土台を活かして、短時間から次のステップに挑戦できる」

という希望を、具体的な制度名と数字の根拠とともに示すことが重要です。

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この記事を書いた人

株式会社パパゲーノ代表取締役CEO / 「生きててよかった」と誰もが実感できる社会を目指して、東京で「パパゲーノ Work & Recovery(就労継続支援B型)」の運営や、支援現場のDXアプリ「AI支援さん」を開発。精神障害のある方との事業開発がライフテーマ。

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