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介護現場が求めるのは【早い・手厚い・簡潔】支援を遠ざける申請の壁

物価高や人手不足が続くなか、国は補正予算案に「医療・介護等支援パッケージ」を盛り込み、介護現場に向けた緊急的な支援を打ち出しました。介護分野への配分は2,721億円です。
※令和7年度補正予算案(一般会計補正第1号)
厚生労働省は、介護分野で必要な人材確保と、介護サービスの円滑な継続を支援する 方針を示しています。

一方で、支援を厚くするほど条件が増え、申請・運用の負担が重くなる仕組みは、現場にとって受け取りにくい支援になりかねません。今回の論点を、介護事業者の視点で見ていきます。

目次

介護分野に2,721億円 緊急パッケージの中心は「賃上げ支援」

今回の支援策の中心は、介護報酬改定の時期を待たずに、まず賃上げ分を下支えする緊急対応です。厚生労働省(老健局)の資料では、介護従事者に幅広く「月1万円相当」の賃上げ支援を行うとされています。

対象は介護分野の幅広い従事者で、訪問看護や訪問リハ、居宅介護支援(ケアマネ)など、これまで処遇改善加算の対象外だったサービスも、加算に準ずる要件を満たす(または見込み)場合は対象に含まれるとされています。

支援期間は、2025年12月から2026年5月まで(令和7年12月〜令和8年5月)の半年間です。その先については、令和9年度の本改定を待たず、2026年6月の期中改定で処遇改善加算を拡充する方針が示されています。実際に、2026年6月には訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援、介護予防支援などで処遇改善加算が新設される予定で、計画書の提出スケジュールもそれに合わせた取り扱いが示されています。

厚労省老健局「令和7年度厚生労働省補正予算案の概要(老健局関係)」

厚生労働省老健局老人保健課 介護保険最新情報Vol.1469

ここまでは「ベースの賃上げ支援」の話です。次に、取り組み状況に応じた上乗せ支援と、そのハードルになり得る「申請の壁」を見ていきます。

上乗せ支援の課題は「申請の壁」

今回の賃上げ支援には、取り組み状況に応じた「上乗せ」が用意されています。生産性向上や協働化に取り組む事業所には月5000円相当が上乗せされ、さらに職場環境の改善に取り組む事業所には別枠の支援があり、人件費に充てた場合は月4000円相当になります(合計で最大月9000円相当)。

ただし、上乗せを受けるにはケアプランデータ連携システムへの対応や、生産性向上推進体制加算の取得など、一定の条件が付く点は留意しておきたいところです。
要件があること自体は、長期的に見れば生産性向上のインセンティブとして重要です。ただ、問題は「足元の経営が厳しい事業所ほど、準備や申請作業が難しい」こと。これが、支援の受け取りをためらわせる申請の壁になります。



ICT導入は「手厚い補助」が用意されるが、小規模事業者には負担が残る

ICT導入の支援は手厚く、機器・ソフトの導入では国・都道府県4/5、事業者1/5の負担割合が定められています。普及促進や伴走支援など、国・都道府県が全額を負担する枠もあります。
とはいえ、現場には「残りの事業者負担」や「導入までの先行投資」「運用定着の手間」が残ります。体力のある事業所は導入を進められても、経営が厳しい事業所ほど申請に踏み切れない。
このギャップをどう埋めるかが焦点です。

賃上げ以外のコスト支援も対象に

補正予算案には、賃上げ以外のコスト支援も盛り込まれています。

・訪問介護・通所介護などの移動に伴うコストへの配慮
・介護施設の食事提供コストへの配慮
・地域の訪問介護・居宅介護支援の提供体制確保に向けた補助

特に移動が伴う居宅サービスは、地域差(移動距離、燃料費、車両維持費)の影響を強く受けます。全国一律の仕組みだけでなく、自治体が地域の実情に応じて上乗せできる余地がどれだけあるかが重要になります。

中小・小規模事業者を救うには「二段階支援」が現実的

生産性向上への誘導は将来的に不可欠です。しかし、目の前の資金繰りや人員不足に直面する小規模事業者に、いきなり多くの要件を求めるのは酷です。そこで必要になるのが、段階を分けた支援設計です。

STEP
まずは「継続」を守る
  • 給与支援+経営継続のための基礎的な財政支援を、できるだけ条件を最小限にして迅速に届ける
  • 申請様式は簡素化し、自治体側で事前記載できる項目を増やすなど、事務負担を最小化する
STEP
次に「改善投資」を促す
  • 経営が落ち着いた段階で、ICT導入や加算取得などを段階的に促す
  • 申請・導入・運用定着を支える伴走支援(窓口・専門職・地域連携)を強化する

居宅サービスには追加配慮を

訪問介護、通所介護、居宅介護支援など、移動距離が長いサービスは物価高の影響を受けやすく、都市部と中山間地で負担の質が異なります。自治体が地方交付金等を活用し、燃料代などへの補助を上乗せするなど、地域実情に応じた柔軟な財政配慮が望まれます。

政策判断と現場の危機感がズレる理由

今回の支援規模について、現場には「足りないのでは」という感覚が根強くあります。その背景の一つとして、政策判断の裏づけとなる統計の限界が指摘されています。

厚生労働省が2025年11月26日に公表した「令和7年度 介護事業経営概況調査」では、令和6年度決算の収支は全体として大きく悪化していないように見えます。全サービス平均の収支差率は4.7%とされています(税引前、物価高騰対策関連補助金を含まない)。

ただし、この調査は一部の事業所を抽出して行う調査で、回答にも一定の手間がかかります。実際、調査対象数17,528に対して有効回答数は8,099(有効回答率46.2%)とされており、経営が厳しい小規模事業者ほど事務負担から回答しづらく、統計からこぼれ落ちる可能性は否定できません。結果として「数字の上ではそれほど悪く見えない」という見えにくい部分が生まれ得るおそれがあります。

こうした見えにくい部分を補う仕組みとして、介護サービス事業者の経営情報を集め、分析結果を公表するデータベースも整備されています。一方で、運用の都合で報告受付を一時停止する対応も取られており、困窮する事業者の状況をタイムリーにつかんで支援につなげる体制は、まだ途上にあると言えそうです。

申請負担を減らす「小さなDX」 AI支援さんという選択肢

「申請の壁」を下げる現実的な対応は、現場に新しい仕事を増やさないことです。大規模投資の前に、次のような小さなDXが役立ちます。

・申請書類・実績報告のひな形を用意する(毎回ゼロから書かない)
・議事録や改善計画の下書き作成をAIで補助(個人情報の取り扱いは厳守)
・業務の流れをこまめに見直す(ムダ工程の削減)

「小さなDX」の一例として、面談記録や会議記録の作成を支えるAIツールの活用もあります。例えば、パパゲーノが提供する「AI支援さん」は、面談や会議の音声をもとに記録を自動生成し、事業所で使っている書式に合わせた書類作成や情報共有を支援するサービスです。記録業務の負担軽減や属人化の緩和につながる手段の一つとして、こうしたツールの活用も選択肢になりそうです。

支援策が「早い・手厚い・簡潔」であることに加えて、現場側も申請しやすくするための省力化が必要です。行政と現場が両輪で「申請の壁」を崩せるかが、今冬から来春にかけての重要なテーマになります。

地域インフラとしての介護を守るために

介護サービスの安定供給は、地域インフラの維持そのものです。危機対応として求められるのは、「早い」「手厚い」「簡潔」な支援。条件の複雑化で必要な事業者ほど取り残されないよう、支援の仕組みと運用(様式の簡素化、自治体の事前記載、二段階支援、伴走支援)を見直せるかが問われています。

現場が来年度の報酬改定を無事に迎えられるよう、制度の正しさだけでなく、現場に届くことを最優先にした施策の進め方が期待されます。

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