精神障害者保健福祉手帳について理解しよう
精神障害者保健福祉手帳とは?
精神障害者保健福祉手帳は、障害者手帳の一種で、精神疾患のある方に交付される大切な手帳です。
この手帳を持つことで、さまざまな支援やサービスを受けやすくなり、日常生活や社会参加をサポートしてもらえるようになります。
この記事では、
- どのような人が対象になるのか
- 申請の流れや診断書の役割
- 発達障害との関係
- 手帳を持つメリット・デメリット
などを、できるだけわかりやすく整理してお伝えします。
対象者と申請の流れ
どんな人が対象になる?
精神障害者保健福祉手帳は、一定期間以上、精神疾患のために生活に支障が出ている人が対象です。
具体的にどんな疾患や状態が対象になるのか、代表的なものは後半の「対象となる代表的な精神疾患」で説明します。
申請のステップ
申請の流れは、おおまかに次のようになります。
原則として、その精神疾患の初診から6か月以上経過していることが必要です(診断書も、その時点以降に作成されたものが求められます)。
- 自治体の窓口で申請書や診断書の用紙をもらう
- 主治医に診断書を書いてもらう
- 必要書類(申請書・診断書・本人確認書類・写真など)をそろえる
※精神障害を支給事由とする障害年金を受給している場合は、診断書の代わりに年金証書で申請できることがあります。詳しくはお住まいの自治体にご確認ください。 - お住まいの自治体の窓口に提出する
ご本人が手続きするのが難しい場合は、家族や医療機関の職員などが代わりに申請できる仕組みもあります。
診断書の役割と更新の注意点
なぜ診断書が必要なのか?
診断書は、「どのような病気・状態なのか」「日常生活にどれくらい影響が出ているのか」を客観的に示すための、大切な書類です。
手帳の等級(1〜3級)を決める際の重要な判断材料にもなります。
診断書には、一般的に次のような内容が含まれます。
- 診断名
- 病状の経過
- 日常生活や社会生活での困りごと
- 今後の見通し
など
更新時のポイント
精神障害者保健福祉手帳には有効期限があり、継続して使うには定期的な更新が必要です。
- 有効期限:交付日からおおむね2年後の月末(有効期限の3か月前から更新申請ができる自治体が多いです)
- 更新時も、基本的には新規申請と同じように診断書などが必要
- 症状の変化に応じて、等級が上がったり下がったりする場合もある
更新期限が近づいてから慌てないよう、手帳の有効期限は早めに確認しておくと安心です。
発達障害は対象になるのか?
精神障害者保健福祉手帳の対象となる精神疾患はさまざまですが、
「発達障害も含まれるのか?」という疑問を持つ方は多いと思います。
発達障害(自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症(ADHD)など)は、国際的な診断基準(ICDやDSM)では「神経発達症」として位置付けられており、精神障害者保健福祉手帳の対象に含まれます。
ただし、
- 実際に手帳が交付されるかどうか
- どの等級になるか
は、「診断名」だけでなく「日常生活への影響の程度」によって判断されます。
同じ診断名でも、困りごとの大きさは人によって異なるためです。
手帳を持つことのメリット
精神障害者保健福祉手帳を持つことで、次のようなメリットが得られる場合があります(内容は自治体や地域によって異なります)。
- 障害者雇用枠での応募がしやすくなる
- 所得税や住民税などの軽減措置
- 公共交通機関や公共料金の割引
- 各種福祉サービスの利用がスムーズになる
こうした支援を通じて、
- 仕事を続けやすくなる
- 経済的な負担が軽くなる
- 社会参加の機会が広がる
といった効果が期待できます。
精神障害者保健福祉手帳の基本と法的な位置づけ
手帳の目的
精神障害者保健福祉手帳は、精神的な障害があることを公的に証明し、必要なサポートにつなげるための手帳です。
「精神保健福祉法」という法律に基づいてつくられた制度で、本人の生活や社会参加を支えることを目的としています。
等級分け(1〜3級)
手帳には、障害の程度に応じて1〜3級の等級があります。
| 等級 | 障害の程度 |
|---|---|
| 1級 | 日常生活の多くの場面で、常に高い支援が必要な状態 |
| 2級 | 日常生活に著しい制限があり、かなりの支援が必要な状態 |
| 3級 | 日常生活や社会生活に一定の制限があり、配慮や支援があれば生活できる状態 |
等級によって、受けられる支援やサービスの内容が変わることもあります。
精神障害者保健福祉手帳の等級システムについて
1級のイメージ
1級は最も重い等級で、
- 自分ひとりで身の回りのことを行うのが非常に難しい
- 常に誰かの見守りや介助が必要
といった状態が想定されています。
2級のイメージ
2級は、
- 日常生活に大きな支障があり、自立した生活がかなり難しい
- 支援や配慮がないと、通院や家事、仕事などが継続しにくい
状態が目安です。
3級のイメージ
3級は、
- ある程度は自立して生活できるものの、社会生活や仕事で支障が出やすい
- 周囲の理解や配慮がないと、負担が大きくなりやすい
といった状態です。
等級ごとの支援
等級が高いほど、受けられる支援が増える傾向がありますが、
「どの等級であっても支援を受ける権利がある」という点が大切です。
本人の状態やニーズに合わせて、利用できるサービスを整理していくことが重要です。
精神障害者保健福祉手帳の対象者を詳しく見る
「長期にわたる精神疾患」とは?
手帳の対象となるのは、原則として「初診から6か月以上」経過した精神疾患のある方です。
これは、一時的な不調ではなく、ある程度長く続いている状態かどうかを確認するための基準です。
対象となる代表的な精神疾患
対象となる疾患の例としては、次のようなものがあります。
- 統合失調症
- うつ病や双極性障害などの気分障害
- てんかん
- アルコール・薬物依存症
- 高次脳機能障害
など、これらの疾患が「どの程度、生活に影響しているか」を総合的に見て、手帳の交付や等級が決まります。
発達障害も対象
前述のとおり、発達障害も精神障害者保健福祉手帳の対象に含まれます。
必要な支援の内容は人によって大きく違うため、医師や相談機関と話し合いながら、手帳を利用するかどうかを検討していくことが大切です。
知的障害がある場合
知的障害と精神疾患の両方がある場合、
- 精神障害者保健福祉手帳
- 療育手帳
の両方を持っている方もいます。
それぞれで利用できるサービスが異なるため、支援者や相談窓口と一緒に「どの制度をどう使うか」を整理していくと安心です。
手帳を持つことのデメリットとよくある不安
デメリットはある?
一般的に、手帳そのものに大きなデメリットは少ないとされています。
ただし、次のような不安を感じる方は少なくありません。
- 「手帳を持っていることを知られたくない」
- 「就職や人間関係に影響が出るのではないか」
精神障害者保健福祉手帳は、本人が伝えない限り、外からわかるものではありません。
また、一般雇用の職場では、手帳を持っていることを企業に伝える義務もありません。
心理的なハードルへの配慮
「手帳を持つこと = レッテルが貼られる」と感じてしまう方もいます。
その場合は、
- 信頼できる支援者や家族と一緒に、メリットと不安を整理する
- まずは相談機関で話だけ聞いてみる
といったステップを踏むことで、少しずつ考えを整理していくことができます。
精神障害者保健福祉手帳の具体的な申請方法
申請のポイント
- 初診から6か月以上経っていることが必要
- 自治体窓口で「診断書用紙」と「申請書」をもらう
- 主治医に診断書を書いてもらう(有料のことが多い)
- 顔写真(縦4cm×横3cm程度)や本人確認書類を用意する
必要書類の詳細は、お住まいの自治体のホームページや窓口で必ず確認してください。
申請から交付までの目安
申請してから手帳が交付されるまでは、おおむね2か月前後かかる自治体が多いです(詳しい期間はお住まいの自治体にご確認ください)。
更新について
- 有効期限:2年
- 更新時も診断書などが必要なことが多い
- 状態が変われば、等級が変更になる場合もある
早めに更新手続きを始めることで、「期限が切れてしまった」というトラブルを防げます。
困ったときの相談窓口
どこに相談すればいい?
わからないことや不安があるときは、次のような窓口を利用できます。
- お住まいの自治体(市区町村)の障害福祉担当課
- 保健所・精神保健福祉センター
- 相談支援事業所
- 病院の医療ソーシャルワーカー
「手帳を取るべきか迷っている」「申請書の書き方がわからない」といった段階でも、気軽に相談して大丈夫です。
まとめ
精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患により生活に困難を抱えている人を支え、
治療の継続や社会参加を後押しするための大切な制度です。
- 対象となる疾患や条件
- 等級の考え方
- メリット・不安材料
- 申請・更新の流れ
- 相談先
を知っておくことで、必要なときに必要な支援へつながりやすくなります。
やすまさこの記事が、精神障害者保健福祉手帳について知りたい方や、申請を検討しているご本人・ご家族のヒントになれば幸いです。









