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「骨太方針2025」で示された医療・介護・障害福祉のDXと処遇改善の方針とは?【経済財政運営と改革の基本方針2025】

「骨太方針2025」は、医療・介護・障害福祉の現場で働く方にとって、これから数年の“環境の変化”を示す重要な文書です。
とくに、慢性的な人手不足と給与水準の課題、そしてDX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れをどう乗り越えるのかが、大きな焦点になっています。

この記事では、

  • 骨太方針2025とは何か
  • 医療・介護・障害福祉の「処遇改善」の方向性
  • 医療・介護・障害福祉DXの具体的な方針
  • 現場として今からどんな準備をしておくとよいか

を、初学者の方にも分かりやすく整理していきます。

目次

骨太方針2025とは? 基本の位置づけを整理

年に1回決まる「国の進む方向」の基本方針

「経済財政運営と改革の基本方針2025」(通称:骨太方針2025)は、2025年6月13日に閣議決定された、今後の経済・財政運営の“設計図”のような文書です。

今年のサブタイトルは「『今日より明日はよくなる』と実感できる社会へ」。
賃上げを起点とした成長型経済をめざすことや、社会保障制度を持続可能な形で守ることが大きな柱として掲げられています。

医療・介護・障害福祉は「全世代型社会保障」の核心分野

骨太方針2025では、第3章で「全世代型社会保障の構築」が取り上げられ、その中で医療・介護・障害福祉は、処遇改善とDXの両面から重点分野として位置づけられています。

つまり、今回の方針は単なる賃上げの話ではなく、

  • 公定価格(診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬)の見直し
  • デジタル技術の活用による生産性向上と業務負担の軽減

をセットで進めるという方向性を示したものといえます。

医療・介護・障害福祉の処遇改善の方針

公定価格分野の賃上げと「コストカット型からの転換」

骨太方針2025では、医療・介護・障害福祉など公定価格で支えられている分野について、

「賃上げ、経営の安定、離職防止、人材確保がしっかり図られるよう、コストカット型からの転換を明確に図る必要がある」

と明記しています。

これまでの歳出抑制一辺倒ではなく、
「現場の賃上げや経営の安定をきちんと考慮する」というスタンスに切り替える方針転換を打ち出している点がポイントです。

2025年末までに報酬改定の効果を検証し、今後の対応を検討

骨太方針2025では、次のような方針も示されています。

  • 2024年度診療報酬改定による処遇改善や経営状況の「実態を把握・検証」する
  • そのうえで、2025年末までに結論を得られるよう検討する

医療分野だけでなく、介護・障害福祉についても、これまで行ってきた処遇改善の実態を把握し、同じく2025年末までに方針を決める方向で検討するとしています。

ここから読み取れるのは、直近の報酬改定(とくに2024年度)の効果をしっかり検証したうえで、次の報酬改定や追加的な処遇改善策につなげていくという「検証にもとづく制度設計」を重視する姿勢です。

介護・障害福祉職員の「他職種と遜色ない処遇」をめざす

介護・障害福祉については、より踏み込んだ記述もあります。

介護・障害福祉分野の職員について、他職種と遜色のない処遇改善や業務負担軽減等の実現に取り組む
これまでの処遇改善の実態を把握・検証し、2025年末までに結論を得られるよう検討する

とされており、「他職種と遜色のない処遇」を目標として明記している点は、現場にとって大きなメッセージです。

単に「賃上げが必要」と書くだけでなく、他職種との格差を意識した処遇水準や業務負担の軽減とセットでの改善を目指すことが強調されています。

医療・介護・障害福祉DXの方針

医療DX工程表にもとづき、医療・介護DXを一体的に推進

骨太方針2025では、「医療・介護・こどもDX」の項目で、医療DX工程表に沿った具体的な方向性が示されています。

主なポイントは次のとおりです。

  • マイナ保険証の利用を促進し、2025年12月の経過措置終了後はマイナ保険証を基本とする仕組みに円滑に移行する
  • 全国医療情報プラットフォームを構築し、電子カルテ情報共有サービス電子処方箋を普及させる
  • PHR(Personal Health Record)の利活用、標準型電子カルテの本格運用に向けた支援策の検討
  • 介護情報基盤の整備、診療報酬改定DX、薬局情報の標準化・DXの推進

これらを通じて、全国どこでも質の高い効率的な医療・介護サービスが提供できる体制を作るとしています。

障害福祉を含めた「生産性向上・省力化」とタスクシフト

DXは医療・介護だけでなく、障害福祉も含めた「生産性向上」のための手段として位置づけられています。

骨太方針2025では、

  • 医療・介護DXやICT、介護テクノロジー、ロボット・デジタルの実装
  • データの二次利用の促進
  • 特定行為研修を修了した看護師の活用やタスクシフト/シェア

などを組み合わせて、医療・介護・障害福祉分野の生産性向上・省力化を実現し、職員の負担軽減や資質向上につなげるとしています。

ここでは、単に「紙をやめて電子化する」というレベルではなく、

  • 役割分担の見直し(タスクシフト)
  • 介護ロボットやセンサー等のテクノロジー活用
  • データに基づく運営改善

まで含めた、広い意味でのDXが想定されています。

データ利活用とサイバーセキュリティの強化

医療・介護DXでは、データ利活用と安全性の両方が重視されています。

骨太方針2025では、

  • 医療・介護データの公的データベースの仮名化情報等の利活用を進める
  • 社会保険診療報酬支払基金の改組、公費負担医療等のオンライン資格確認を推進
  • 医療機関のサイバーセキュリティ対策や、医薬品・医療機器等の物流DXに資する製品データベース構築

などが盛り込まれています。

データを「活用する」だけでなく、
サイバー攻撃などから守る体制整備も、今後の重要なテーマになっていくと考えられます。

現場として何を準備しておくとよいか

ここからは、骨太方針2025の方針をふまえて、医療機関・介護事業所・障害福祉サービス事業所が、今から意識しておきたいポイントを整理します。

処遇改善:自事業所の状況を「見える化」しておく

2025年末までに、処遇改善や報酬改定の効果について国が検証を行うとされています。

その際、現場のデータやヒアリング結果が重要な材料になります。
事業所としては、次のような点を整理しておくとよいでしょう。

  • 直近数年の給与水準・賞与の推移
  • 加算や処遇改善加算をどのように賃金へ反映しているか
  • 離職率・採用状況、職員からの声
  • 業務負担軽減のために行っている工夫(ICT導入、業務分担の見直しなど)

また、「他職種と遜色のない処遇」をどう考えるかは、地域の賃金水準や同規模事業所との比較も含めて検討しておくと、今後の交渉・説明に役立ちます。

DX:小さな一歩から、将来の制度変更を見据えた準備を

マイナ保険証や全国医療情報プラットフォーム、介護情報基盤など、今後数年で制度的なDXが一気に進む見込みです。

とはいえ、いきなり全てのシステムを入れ替えるのは現実的ではありません。
まずは、次のようなステップで準備を進めることが考えられます。

  • 自事業所のIT環境(インターネット回線、端末、セキュリティ)の棚卸し
  • 電子カルテや介護ソフト、請求ソフトが、将来の標準仕様やオンライン資格確認に対応できるか、ベンダーに確認
  • 紙で行っている手続きや記録のうち、「デジタル化してもよさそうなもの」を洗い出す
  • 職員向けのIT研修や、AI・DXに関する勉強会の実施

とくに、介護・障害福祉分野では、介護テクノロジーやロボットの導入だけでなく、
記録・情報共有・ケア会議などのプロセスを見直すことが、DXの効果を高めます。

人材育成:アドバンスト・エッセンシャルワーカーの視点

骨太方針2025では、デジタル技術を活用してより高い賃金を得る「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」の育成にも触れています。

これは、

  • デジタル機器の操作やデータ活用に強い
  • チームの業務改善をリードできる
  • ユーザーや家族への説明・コミュニケーションにも長けている

といった人材像をイメージすると分かりやすいかもしれません。

現場としても、

  • 若手職員にICT担当・DX推進役を担ってもらう
  • ベテラン職員とペアを組ませて、現場感のあるDXを進める
  • 外部研修やオンライン講座を活用して、デジタルスキルを底上げする

といった取り組みを少しずつ始めておくと、将来の処遇改善やキャリアパスの議論にもつなげやすくなります。

障害福祉とAI・デジタル活用のヒント

骨太方針2025は、個別のツール名やサービス名までは示していませんが、「医療・介護・障害福祉分野の生産性向上・省力化」と「データの二次利用」を重視していることから、AIの活用余地も今後さらに広がっていくと考えられます。

たとえば障害福祉の現場では、

  • 記録や支援会議の議事録づくりを、音声入力+AI要約で効率化する
  • サービス等利用計画の素案をAIに作ってもらい、人がチェック・修正する
  • 個別支援計画の振り返りを、データにもとづいて行えるようにする

など、「人にしかできない支援」に時間を振り向けるための使い方がポイントになります。

一方で、個人情報保護や倫理的な配慮は欠かせません。
AIに利用者の詳細な情報を入力する場合は、事業所としてのルールづくりや、利用規約・プライバシーポリシーの確認が必須です。

まとめ:骨太方針2025を「現場のアクション」に落とし込む

最後に、記事のポイントをまとめます。

  • 骨太方針2025は、賃上げとDXによって「今日より明日はよくなる」社会をめざす、国の基本方針です。
  • 医療・介護・障害福祉分野について、コストカット型からの転換と、公定価格分野の賃上げ・経営安定・離職防止・人材確保を重視する姿勢が明確に示されています。
  • 2024年度診療報酬改定やこれまでの処遇改善の効果を検証し、2025年末までに今後の対応方針をまとめることが打ち出されています。
  • 医療・介護・障害福祉DXでは、マイナ保険証、全国医療情報プラットフォーム、介護情報基盤などを軸に、データ利活用と業務負担軽減を進める方針です。
  • 現場としては、処遇・人員・業務負担の実態の見える化と、DXや人材育成への小さな一歩を今から積み重ねておくことが大切です。

骨太方針はやや抽象的な表現が多い文書ですが、
今回の2025年版は、医療・介護・障害福祉の「処遇改善」と「DX」がこれから数年間の大きなテーマになることを、はっきりと示しています。

自分たちの事業所・団体にとってどこがチャンスになりそうか、どんな準備をしておけば変化に対応しやすいかを話し合うきっかけとして、この記事を役立てていただければ幸いです。

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この記事を書いた人

株式会社パパゲーノ代表取締役CEO / 「生きててよかった」と誰もが実感できる社会を目指して、東京で「パパゲーノ Work & Recovery(就労継続支援B型)」の運営や、支援現場のDXアプリ「AI支援さん」を開発。精神障害のある方との事業開発がライフテーマ。

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