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支援と経営はどう繋がっている?パパゲーノの事例で解剖する「就労継続支援B型」の報酬体系とビジネスモデル

「支援の質と売上はトレードオフ(二律背反)なのか?」
「利用者の工賃を上げると、事業所の収益はどうなるのか?」

「就労継続支援B型に、工賃を高めるインセンティブはないのか?」

これらは、就労継続支援B型を運営する上で避けては通れない問いです。先日公開したパパゲーノ社内で事業計画を議論した動画では、「良い支援を追求することが、結果として事業所の収益最大化に繋がる」という就労継続支援B型の報酬体系のメカニズムが赤裸々に語られました。

今回はこの動画の内容をベースに、パパゲーノの実際の数字やAI活用の戦略を交えながら、「支援と経営がどう連動しているのか」を解説します。

パパゲーノAI福祉研究所のオウンドメディア向けに、動画の文字起こしをベースにした解説記事を作成しました。

「福祉の現場」と「経営(数字)」は相反するものではなく、良い支援が良い経営に直結するように制度が設計されている点に焦点を当て、パパゲーノらしい「AI・テクノロジー活用」の視点も加えて構成しています。

目次

就労継続支援B型の売上を決める「基本の方程式」

就労継続支援B型の売上は以下の要素で構成されています。

売上 = (延べ利用者数 × 基本報酬単価) + 各種加算 + 処遇改善加算

一見シンプルに見えますが、ここには「支援の質」と「事業所の収益」を連動させる重要な変数が2つ隠されています。

  1. 平均工賃月額:利用者に支払う給与の平均
  2. 就労移行支援体制加算:一般企業への就職の実績

パパゲーノでは、単に「毎日来てもらうこと≒利用者さんを囲い込むこと」だけでなく、この2つの変数を高めることに注力しています。なぜなら、ここが「支援の質」が如実に「数字」として経営指標に直結するためです。

就労継続支援B型は「稼働率」のみを意識して、1人の利用者さんを何十年も囲い込むことで安定収益を実現しているケースが多いという批判もあります。

変数①:平均工賃月額が「基本報酬」を決める

就労継続支援B型は「利用者に高い工賃を支払っている事業所ほど、国から受け取る報酬単価が高くなる」という仕組みになっています。

パパゲーノ Work & Recoveryの場合は、以下の通りです。

  • 前年度の平均工賃月額: 2.5万円以上〜3万円未満
  • 基本報酬単位: 738単位(1日あたり)

もし、僕たちが生産活動(仕事)の売上を伸ばし、利用者さんの工賃を月額3万円以上に引き上げることができれば、基本報酬は「758単位」にアップします。さらに3.5万円を超えれば「805単位」になります。

パパゲーノは「6:1」の最も手厚い人員配置にしています。記載されている報酬点数は「6:1」の人員配置を前提にしているのでご注意ください。配置基準によっても報酬は異なります。

「計算式」の変更と現場への影響

平均工賃月額の計算式は、2024年度から平均工賃月額の計算式が変更されています。

  • 旧計算式: 支払った工賃総額 ÷ 「登録」利用者数
  • 新計算式: 支払った工賃総額 ÷ 「1日平均」利用者数

以前は「登録だけして通所していない人」がいると平均工賃が下がってしまう計算でしたが、現在は「実際に来ている人」ベースで計算されます。これにより、適正な評価がなされやすくなりました。

厚労省の統計などを見る際は、見かけ上の平均工賃月額は高まっていますが、実態としては何も変わっていないのでご注意ください。

テクノロジーで工賃を上げる

平均工賃月額を高めていくために重要になるのが、生成AIやITの活用です。 従来の内職作業だけでは、工賃を劇的に上げることは困難です。パパゲーノでは、生成AIを活用した環境調整により、多くの精神障害・発達障害のある方が自分の強みを発揮して活躍できる職場環境や業務調整をすることで、工賃向上を目指しています。

テクノロジーを活用して「稼げるB型」を作ることは、利用者さんの経済的自立だけでなく、事業所の基本報酬アップ(経営安定)にも直結するのです。

変数②「就労移行支援体制加算」が最強のレバレッジ

就労継続支援B型の売上を決める最も大きな変数が、「就労(一般企業への就職)」に関するインセンティブです。

企業へ就職し、6ヶ月間定着すると、事業所に強力な加算がつきます。これを「就労移行支援体制加算」と呼びます。

数字で見るインパクト

パパゲーノの現在の体制(職員配置など)における試算は以下の通りです。

  • 1人就職・定着すると: 利用者1人あたり1日 72単位 が加算される
  • 期間: 翌年度の1年間ずっと加算される

「たった72単位?」と思うかもしれません。しかし、これは通所する全利用者の報酬に上乗せされます。とんでもなく大きなインパクトです。

動画内の試算では、年間売上への影響額は就職者1名あたり約400〜500万円にのぼると紹介しています。 もし年間5名が就職・定着し、稼働率が安定していれば、就労継続支援B型の指定1つで年1.4億円規模の売上が見えてきます(就職実績が少ない場合と比較して数千万円の差です)。

就労移行支援体制加算が増えると「賞与」も増える

就労移行支援体制加算が上がれば「処遇改善加算(スタッフの給与に還元しなければならないお金)」も増えます。

  • 就職実績2名の場合:処遇改善加算 約950万円
  • 就職実績5名の場合:処遇改善加算 約1,174万円

その差額は200万円以上になります。

つまり、「利用者さんの就職支援を頑張る」→「事業所の売上が大幅に増える」→「スタッフの賞与(ボーナス)が増える」という、誰もが幸せになる制度設計になっているのです。

「悪用」ではなく「善用」を:制度の光と闇

就労継続支援B型の報酬体系は非常に良くできていますが、「ハック(悪用)」する事業者も現れます。最近報道された「絆ホールディングス」の事件(就職と退職を繰り返させる不正受給)が顕著な例です。36ヶ月プロジェクトという名前で、就労移行支援体制加算を1人の利用者で何度も繰り返し取得し、20億円超を過大請求していた疑惑があります。

制度の穴を突いて数字を作ることはもちろん良くないことです。

パパゲーノが目指すのは「IPSモデル(Individual Placement and Support)」「支援員7原則」に基づいた、本質的な支援の結果としての収益化です。

  • 無理やり就職させるのではなく、本人の「働きたい」という意思を尊重する。
  • 6ヶ月の定着支援を丁寧に行う(3者面談や職場訪問)。
  • その結果として、平均工賃月額が高まり、就労移行支援体制加算という形で評価される。

これが、健全な経営のあるべき姿です。

支援の質は「経営」と紐づいている!

就労継続支援B型は報酬体系がシンプルで「支援と経営は繋がっている」非常にわかりやすいビジネスモデルです。

  1. 平均工賃を上げる
  2. 就職・定着を支援する
  3. 稼働を安定させる

という3点が変数なので、この3つを徹底していくことが求められます。

支援と経営が紐づいていることを意識してみるきっかけになれば幸いです。

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この記事を書いた人

株式会社パパゲーノ代表取締役CEO / 「生きててよかった」と誰もが実感できる社会を目指して、東京で「パパゲーノ Work & Recovery(就労継続支援B型)」の運営や、支援現場のDXアプリ「AI支援さん」を開発。精神障害のある方との事業開発がライフテーマ。

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