利用者作業のルールがむずかしくて、毎回スタッフに聞いてしまう。
パソコン作業にも自信がなくて、不安になりやすい。
スタッフも忙しそうで、すぐに聞けないことがある。
就労継続支援B型の現場では、このようなモヤモヤを抱えやすいと思います。
パパゲーノの「仕事相談BOT」は、そんなときに相談できるAIの相棒です。
人の支援を減らすのではなく、「まず聞いてみる相手」を一人増やすイメージのツールです。
この記事を読むと、次のようなことが分かります。
- 仕事相談BOTがどんなものか、どんな役割を持っているのか
- 生産活動・記事作成・商品発注計算・自己学習など、具体的な活用場面
- 利用者の声から見える、仕事相談BOTならではのメリット
- すぐに試せる使い方のヒントと、導入するときのポイント
一緒に、AIを「こわいもの」ではなく「頼れる仲間」として使うイメージを持っていきましょう。
仕事相談BOTとは?
仕事相談BOT
仕事相談BOTは、かんたんに言うと「困ったときに、まず話を聞いてくれるAIの相談相手」です。
パソコンやタブレットから、文字や画像で質問すると、その内容に合わせて答えを返してくれます。
就労継続支援B型事業所は、一般企業での雇用がむずかしい障害のある方に対して、雇用契約を結ばずに就労の機会や訓練の場を提供する福祉サービスです。
自分のペースで働く練習をしながら、作業に取り組む場所というイメージです。
作業を通して、体調の整え方や仕事の進め方を少しずつ身につけていきます。
その中で、仕事相談BOTは「作業や学習に関する小さな困りごと」を、その場で相談できる相手として使います。
難しい専門用語を知らなくても、「プロンプト(AIへの指示文)」として、ふだん話している言葉で相談できます。
「〜してください」「〜を教えてください」と、話しかけるイメージで入力していきます。


人の支援を減らすのではなく、質問先を増やすためのツール
仕事相談BOTは、スタッフの代わりではありません。
あくまで「質問しやすい、もう一人の相談先」を増やすためのツールです。
- ちょっとした迷いを、その場で相談できる
- 同じことを何回聞いても、気まずさを感じにくい
- スタッフが他の対応で手が離せないときの「つなぎ」になる
このような役割を持っています。
一方で、大事な決定や体調・人間関係の悩みなどは、必ずスタッフに相談することが前提です。
仕事相談BOTも、「これはスタッフさんにも相談してみましょう」と促すように設計します。
AIに任せきりにするのではなく、「人」と「AI」の両方をうまく使い分けていくイメージです。
利用者の声:まず相談できる相手が増える安心感
実際に使っている方からは、次のような声が聞かれています。



分からないことがあれば、まずBOTに聞いてみます。
人に聞く前に、自分なりに問題を考えるきっかけにもなっています。



同じようなことを何度も聞いてしまっても、botだったら困らせてしまったりするようなことがないので、安心して質問できます。
このように、「相談できる相手が一人増えた」という安心感が、仕事相談BOTの大きな特徴です。
生産活動の指導での活用:データ入力・画像からの読み取りなど
ルールに沿ったデータ入力の相談相手になる


データ入力の作業では、「このパターンはどう入力すればいいのかな」と迷う場面が出てきます。
作業マニュアルを読んでも、最初はイメージしづらいことも多いです。
仕事相談BOTに相談すると、
- 作業ルールに合わせて、入力の仕方を説明してくれる
- なぜその入力になるのか、理由もいっしょに教えてくれる
- 「1. ここを確認する → 2. このルールを当てはめる → 3. このように入力する」と、
次に何をすればよいかをステップで示してくれる
といったサポートが期待できます。
それでも難しい場合は、BOTのほうから「わからない場合は仕事相談スタッフに確認してください」と案内します。
AIだけで完結させず、「スタッフにつなぐ役目」も持たせるのがポイントです。
質問の仕方の例として、次のようなパターンがあります。
- 画像を添付して質問
「この画像の入力欄は、どの項目をどこに入力すればよいですか?」 - 作業マニュアルの文章をコピーして質問
「このマニュアルの 〇〇〇〇のところが分かりません。
具体的な例を出して説明してもらえますか?」 - 自分の言葉で状況を説明して質問
「電話番号が2つ書いてあるサイトがありました。
代表番号だけ入力するルールで合っていますか?」



マニュアルを読んでもよく分からないときに、BOTに聞くと丁寧に教えてくれて安心します。
スタッフさんに相談するときも、どこまで自分でやったか、何がわからないのかを説明しやすくなりました。
基礎的な操作や「今さら聞きづらいこと」にも付き合ってくれる
生産活動では、パソコンの基本操作などもよく出てきます。
たとえば、次のようなことです。
- ファイル名の付け方
- フォルダの作り方
- Excelでセルを選ぶ操作
- コピー&ペーストの手順
こうした内容は、「今さら聞きにくい」と感じることがあります。
仕事相談BOTは、何度同じことを質問しても、ていねいに説明し直してくれます。
人の手間をとらずに、「分かるまで繰り返し聞ける」安心感が生まれます。
実際のQ&Aのイメージは、次のような形です。



Excelで、横に3つのセルをまとめて選ぶにはどうしたらいいですか?



1つ目のセルをクリックします。
そのままキーボードの Shift キーを押しながら、3つ目のセルをクリックしてください。
すると、間のセルもまとめて選択できます。



コピーとペーストのショートカットキーを教えてください。



Windowsの場合、コピーは Ctrl と C、ペーストは Ctrl と V を同時に押します。
キーボードに慣れたいときは、少しずつ試していきましょう。
画像に写った電話番号をテキストにしてもらう
仕事相談BOTは、画像に写った文字を読み取ることもできます。
たとえば、手書きのメモやチラシの写真に写っている電話番号を、数字として書き起こしてもらう使い方です。
会話イメージは次のとおりです。



この画像に写っている電話番号を、数字だけ教えてください。
(電話番号が写った画像をアップロード)



電話番号は『000-0000-0000』です。
このように、目で読み取るのが大変なときの「代読」のような役割も期待できます。
もちろん、最終的には自分の目やスタッフの確認も合わせて行い、入力ミスがないかをチェックしていきます。
生産活動の指導での活用:記事作成のサポートでの活用
タイトルと指示から記事のたたき台を作ってくれる
広報やブログ記事のような文章作成にも、仕事相談BOTを活用できます。
記事のタイトルと、どのような記事にしたいかを指示すると、文章のたたき台を作ってくれます。
このときに使うのが「プロンプト(AIへの指示文)」です。
たとえば、次のように入力します。
- 「就労継続支援B型でのAI活用について、初心者向けにやさしく説明してください。」
- 「事業所のお花見イベントレポートの文章を、500字くらいで下書きしてください。」
出てきた文章をそのまま使うのではなく、「たたき台」として見ていくことが大切です。
表現を自分の言葉に直したり、事業所ならではのエピソードを足したりしながら、スタッフと一緒に仕上げていきます。
ファクトチェック(事実確認)のサポート
記事を書いていると、「この説明は一般的な知識として正しそうかな?」「専門用語の使い方は自然かな?」と迷う場面があります。
そんなとき、仕事相談BOTに文章を貼りつけて、確認してもらうことができます。
- 「この説明は、一般的な内容としておかしな点はありますか?」
- 「この文章の中で、専門用語の使い方が不自然なところはありますか?」
といったプロンプトを使うと、気をつけたほうがよい表現を指摘してくれます。
ただし、AIの答えがいつも完全に正しいとは限りません。
制度や法律、医療に関わる内容などは、必ず人が最終確認を行うことが重要です。
あくまで「チェックの補助」として、うまく取り入れていきましょう。
サムネイル用の短い文言を考えてもらう
長い記事タイトルから、10〜15字程度の短いキャッチコピーを作るのも、BOTが得意な作業です。
サムネイル画像やチラシの一言メッセージとして活用できます。
やり取りのイメージは次のとおりです。



タイトル『パパゲーノの就労継続支援B型で大活躍している仕事相談BOTとは?』から、
サムネイル用に10〜15字くらいの短い言葉を3つ考えてください。



1.「AIと一緒に働く練習」
2.「仕事相談の新しい相棒」
3.「聞きやすいAI相談室」
このようにいくつかの候補をまとめて考えてくれます。



短く要点をまとめるのが難しい時、botが手助けしてくれます。
そこから自分なりに選んで、スタッフさんと一緒に適した言葉にアレンジしています。
生産活動の指導での活用:商品発注計算での活用
計算式に沿って自動で計算してくれる
商品や消耗品の発注では、「単価」「個数」「予備の割合」など、いくつかの数字を組み合わせて考える必要があります。
仕事相談BOTに数値を入力すると、あらかじめ決めておいた計算式に沿って、必要な数量や金額を計算してくれます。
さらに、「この計算式は、何を意味していますか?」と質問すると、
計算の条件や考え方を整理して説明してくれます。
ただ結果を見るだけではなく、「なぜこの数になるのか」を理解する練習にもつながります。
条件に応じて、適した計算方法を一緒に考える
発注の場面では、「ピッタリの数だけ頼むべきか」「少し多めに頼むべきか」など、状況によって考え方が変わります。
仕事相談BOTに相談すると、条件に応じた複数のパターンを提案してくれます。
最終的にどれを採用するかは、スタッフと一緒に決めていきます。
具体的な入力例とプロンプト例(商品の発注)
ここでは、イメージしやすいように、サンプルの数値でやり取り例を紹介します。
実際の金額や数量とは関係のない、練習用の数字です。
発注個数の計算式が下記の場合のBOT回答例を記載します。
- 発注個数 = 発注量 – ( ステータスが「納品待ち」の発注個数の合計 – 発注中数 )



発注量が5で発注中数が0、
ステータスが「納品待ち」のレコードが0件 の場合、今回の発注個数を教えてください。



条件:
・(発注量) = 5
・(発注中数) = 0
・ステータスが「納品待ち」の該当レコード合計発注個数 = 0
計算式(アルファベット末尾のSKUの場合): 発注個数 = 発注量(5) – (該当ステータスの合計(0) – 発注中数(0)) = 5 – (0 – 0) = 5
よって、発注個数:5



計算が苦手だったり自信がなくても、BOTに相談しながら進めたおかげで発注の作業に取り組めるようになりました。
数値を打ち込むだけで、実際どんな式で考えればいいのかまで教えてくれるので理解しやすいです。
自己学習の相談相手としての活用
「そもそも何をすればいいか」から一緒に考える


パパゲーノでは生産活動の他に、自分のやりたいことを勉強できる自己学習の時間を設けています。
「勉強したほうがいいのは分かるけれど、何から始めればいいか分からない。」
そんなときも、仕事相談BOTが相談相手になります。
自分の
- 興味があること
- 得意だと感じること
- やってみたい仕事のイメージ
などを一緒に整理していきます。
質問の例としては、次のようなものがあります。
- 「パソコンが苦手でも、これから身につけておくと良いスキルはありますか?」
- 「将来、事務の仕事にチャレンジしてみたいです。
今からできる練習には、どんなものがありますか?」 - 「コミュニケーションに不安があります。
少しずつ自信をつけるための練習方法を教えてください。」
このように聞くと、「候補のスキル」や「小さな一歩」のアイデアを一緒に考えてくれます。
具体的なプランや計画を立ててもらう
学習を続けるためには、「無理のないペース」がとても大切です。
仕事相談BOTには、期間や頻度も含めて相談してみましょう。
たとえば、次のように伝えます。



1か月くらいで、パソコンのタイピングに少し慣れたいです。
1回15分くらいなら取り組めそうです。
どんな計画が考えられますか?
するとBOTは、
- 週に何回くらい取り組むか
- 1回の練習でやる内容
- できたことを振り返る方法
などを、ステップごとに提案してくれます。
最初から完璧な計画を目指すのではなく、「まず1週間やってみて、合わなければ調整する」という考え方で、一緒に試していきます。
教材や資料を教えてもらうときのポイント
BOTに学習教材を聞くときは、特定のサイト名だけでなく
- 「どんなキーワードで検索すると良いか」
- 「どのような点に気をつけて情報を選ぶと良いか」
をあわせて尋ねるのがおすすめです。
たとえば、



Wordの基本操作を学びたいとき、どんなキーワードで検索したら良いですか?
また、学習サイトを選ぶときのポイントも教えてください。
と聞くと、
- 「『Word 初心者 基本操作』などのキーワードがおすすめです」
- 「企業や公的機関が運営しているサイトかどうかを確認しましょう」
といったヒントが返ってきます。
具体的なサイト名を教えてもらったときも、その情報が公式のものかどうかを、自分やスタッフで確認することが大切です。
AIの提案を「きっかけ」にしながら、自分で情報を選ぶ練習にもつなげていきます。
モチベーション維持の相談相手として
学習は、やる気が続かない日があって当たり前です。
そんなときも、仕事相談BOTに気持ちを言葉にしてみると、少し気持ちが整理されることがあります。
会話のイメージは、次のような形です。



やる気が出ないときに、どうしたら良いですか?



やる気が出ない日もありますよね。
まずは、今日は5分だけ取り組んでみませんか?
それも難しいときは、ノートを開くだけでも構いません。
終わったあとに、『できたこと』を一緒に振り返ってみましょう。



BOTと相談しながらだと、自分に合った勉強を少しずつ続けられています。
できなかった日も、責めるのではなく、次にどうするかを具体的な案や安心できる方法と一緒に考えてくれるのがありがたいです。
利用者の声から見る「仕事相談BOT」の良さ
仕事相談botを使ってみた利用者さんからの実際の感想コメントを一部まとめます。



仕事相談BOTがあるので、質問しやすい



お仕事BOTの存在を知って、もしかしたら頭が悪くてもAIの補助で一定のレベルのように振舞えるのではないかという可能性を感じている。



AIを活用しながら働くのを当事者の方にももっと勧めたい。



仕事上の不明点を人に尋ねる際、『何度も聞くと迷惑ではないか』といった遠慮や人間関係の悩みはどうしても生じますが、BOTであれば気兼ねなく質問して解決できる点が素晴らしいと思いました。
回答の質も高く、教わる相手によって内容が異なるといったトラブルも防げそうです。
自身のスキルや対人面に課題を感じていた私にとって、『そうした弱点をツールで補えるのではないか』という可能性を実感できただけでも、今回参加して本当に良かったと感じています。



「仕事相談BOT」はすごく良いなと思いました。
頭では分かっていても「聞いて不安を解消したい」という時もあったりします。聞きたいんだけど、聞くと怒られそうだと思っちゃう時とかもやっぱりあって。人間だと、何度も何度も同じことを聞いてしまうと、相手が怒ってしまうのも理解できます。それを避けるために業務でわからない部分を聞かないでいると、解決もできず、結局より深刻な問題が起きて怒られちゃう。
その点、AIは感情がないので、何回も同じことを聞いても、いつも同じように答えてくれます。それがすごくいいところです。何度も何度も、同じことを聞いても誰も何も怒らない。スタッフさんの時間も、利用者さんの ケアか、やりたいことの応援とか、「AIにできないこと」にコミットできる時間が多くなると思います。
「仕事相談BOT」は、障害とか病気の有無に関わらず、色んな職場やお子さんの勉強とかにも転用できる仕組みだなと感じています。



お仕事BOTは他の方も一度知って欲しいと思います。AIって聞いた事あるけど触った事は無い人はたくさん居ると思いますが。触るとすごいと感じると思います。
このように、仕事相談BOTは「人の代わり」ではなく、「人の支援を支えるパートナー」として、さまざまな場面で力を発揮しています。
まとめ:これからAIを活用していくための一歩


この記事では、当事業所で導入している「仕事相談BOT」という対話型AIについてご紹介しました。
施設内でどのようにAIを使っているのか、イメージしていただけたでしょうか。
- 就労継続支援B型の現場で、利用者さんの「ちょっと聞きたい」に応える相談相手として使っています。
- 生産活動のルール確認、PC操作の手順、画像データの文字起こしなど、細かな作業の疑問に対応します。
- 記事作成やタイトル案出し、商品発注に必要な簡単な計算など、スタッフの業務もサポートします。
- 学習の振り返りや目標の整理など、自己学習やモチベーション維持のサポートにも活用しています。
一方で、AIはあくまで「補助的なツール」です。
大切な判断や支援方針の決定は、これまで通りスタッフが行い、人とAIのそれぞれの得意な部分を組み合わせるようにしています。
このような取り組みを通じて、
「質問しやすい環境をふやすこと」
「一人ひとりのペースで学べる選択肢をふやすこと」
を目指しています。



福祉の現場でのAI活用に関心のあるご家族の方や、他の事業所の支援者の方にとって、
当事業所の事例が、今後の検討のひとつの参考になれば幸いです。









